卒業研究要旨(2016年度)

ジョンソンタウンの暮らしからみるひとつの住まいのあり方 ~ 創造的ライフスタイルと価値を共有する ~

2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 原嶋美央

1.研究目的と背景

元米軍基地を活用してアメリカ風のまちなみを形成し、景観大賞を受賞した入間市ジョンソンタウン。活気溢れ、人々が賑わう中で単なる観光地ではなく、居場所としてまちと人と繋がりを持って活き活きと暮らしを楽しんでいる人々がいる。本研究では、このまちの魅力とライフスタイルに着目した。

2.調査概要

ヒアリング調査+観察調査(10月〜1月)運営設計、タウン内で住む働く人々22名に取材。生活の様子、環境づくりの考えやこだわり、交流などのエピソードをうかがい、実際にまちを歩いて収集。より深くまちの内面に触れるため、店舗アルバイトとして約5ヶ月間お世話になった。自らが内側の人間となり自らの視点でも魅力と課題を洗い出した。

3.調査結果

3-1.成り立ち構造

ヒアリング内容から、特徴と成り立たせている要素、およびその関連性を整理した(図2)。地域文脈の象徴である米軍ハウスに合わせたアメリカ風のまちなみ景観を基盤として、コミュニティを促す設計とルールなどの仕組みがまちを支え、それに住まい手が主体的に関わることによって環境と個人のライフスタイルが支え合っている。この環境維持には、メディアを含む外部の人々も相互に関わっている。

3-2.自由さとまとまりのあるまちづくり

・個性と統一感が共存した景観米軍ハウスの雰囲気にまち全体を統一する一方で、DIYで住人の個性やこだわりがそれぞれに表現され、全体で魅力的なまちなみをつくりあげている。

・懐かしさのあるコミュニティ価値を共有することで自然発生的に互いを認識し、交流が生まれる。助け合い精神がありつつ強制されない程よい距離と関係性が、居心地のよさに繋がっている。

・居心地のよさ住人が自分のペースで生活・仕事をして、ルールを大事にしながらも自由な過ごし方が許容され、ゆったりとした時間の流れを感じる。

3-3.個人が主体的に創造するもの

自らつくるDIYのこだわりは、個人で楽しむも開いて見せてもよい、ハレとケの区別を自由にできる。作り手が安全面を補助し、プライバシーを守りながらも楽しみ、表現する意思が見られる。また、自分の趣味が仕事にも活かされ、他者とシェアしながら、自分のペースで関わり生活を楽しんでいる。

4.結論

現代の生活は余裕のない忙しさの中、与えられたサービスや情報を享受する受動的で消費的な価値観に支配されがちである。一方で、このまちの自ら主体となり、価値観を共有しながらゆったりと生活を楽しむ姿勢は、創造的なライフスタイルの実現といえる。

(図1)ジョンソンタウン概要
所在地 埼玉県入間市東町
面積 約25,000m2
建物 米軍ハウス24棟/平成ハウス35棟など戸数79棟
用途 居住(約130世帯)/店舗(約50店)
所有管理 礒野商会
設計 渡辺治建築都市設計事務所
1954年に建設された米軍ハウスは老朽化してほぼ取り壊されたが、進駐軍のDNAを残した、将来の標準になる住宅を目標として1996年に復興を開始。現在は全て賃貸でスケルトン仕様、DIY可能。全面改修と建て替えを行い、現代仕様の平成ハウスを新築し、住居だけでなく店舗(カフェ、雑貨店、花屋、スタジオ、美容院ら)が多種多様に点在している。

(図2)ジョンソンタウンの成り立つ相関図



2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新