卒業研究要旨(2016年度)

街 gram

2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 正木あすか

1.はじめに

 豊田地域は人口減少によりコミュニケーションの衰退、高齢化などの郊外地域特有の問題が進行している地域である。本計画では問題の解決策としてコミュニケーションの衰退に着目し、人と人とのつながりを作ることが地域の活性化につながると考えた。そこで、人と人をつなぐ役割として、生活に最も近い部分である第1種低層住居専用地域の中の「日常のシーンを切り取る」ことで人と人とのつながりを形成し、現代のインスタグラムのような住宅地の新たなコミュニティライフスタイルを提案する。

2.敷地概要

対象敷地:東京都日野市東豊田3丁目(日野第二中学校地域)
敷地面積:22,300m2
用途地域:第1種低層住居専用地域
住民数:約240~300人(平均世帯人数2.07人)
高齢化率:25.8%/高齢単身世帯の割合:12.1%

敷地周辺の状況:
 黒川清流公園と中央線の線路沿いの間に位置する住宅街。高齢化率は比較的高く、高齢単身世帯の割合は日野市で最も高い。豊田駅からは約10分と便利な立地であるが、南口の再開発エリアや大規模団地である多摩平の森エリアに比べると少し孤立した印象を受ける。住宅地の中に保育園、グループホーム、居酒屋、家電屋、花屋が存在し清流公園と住宅地の間には5階建ての団地がそびえ建っている。敷地調査を行って感じたことは黒川清流公園沿いを散歩する住民が多く、清流を眺めたり、鯉や鴨を見に来る人など見かけた。この地域では憩いの場となっていると言える。しかし、公園と住宅地の間に建つ団地により自然を感じることができないという問題も挙げられる。

3.設計コンセプト

3-1「フレームを通し日常シーンを切り取る」

 そこで自然と映り込む風景を人がフレームを通してみるということ。

(1)空の天井...通路を通る人が空を見上げるとフレームにより空が切り取られる。
(2)流れる景色...線路を走る電車、歩く人、流れる水、車をフレームで切り取る。
(3)どこでもドア...路地と広場の間にフレームを設け、双方の日常を切り取る。
(4)個人の風景...自転車や車、連なる屋根の様、駐車場の猫、裏庭の梅の木。
(5)多面フレームの団地...団地をくり抜き団地の裏にあった清流公園の自然を切り取り、四季の表情が見える。
(6)広場の風景...歩きながらフレーム越しの広場を横目に散歩ができる。
(7)橋としてのフレーム...上から下を切り取る場合、フレームは橋の役割もする。

3-2「個人の開く部分を切り取り集める」

 建物で作られたフレームの個室は、第二の自分の部屋であり自分の一部を地域に発信する空間と街としての機能(コミュニティガーデン、図書館、広場、受付、ピロティ、展示場、テラス、展望台)が入る。また、アパート跡地に個室を格子状に設置し、尚且つ既存住宅の隙間に被らない様に配置することで視線の抜けを創り敷地に落とし込む。

(1)個室つながり...例えば料理好きと器好きの二人の住人の個室がつながり、カフェとして機能する。
(2)コミュニティガーデン...フレームで四方八方を囲まれ住人専用のガーデン。野菜の成長を切り取る。
(3)作品の壁...外からも中からも作品を見ることができる展示場は作品を壁に敷き詰めることで室内では壁紙のように見え、外からは建物の表情を切り取る。
(4)多面フレームの個室...個室とフレームのコラボにより個室内から見ると多面フレームの様に切り取ることができる。

(図1)対象敷地
(図2)制作イメージ

→卒業制作紹介

2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新