卒業研究要旨(2016年度)

シェアカフェが地域に与える影響 〜 青梅 cafe ころんからみる人のつながり 〜

2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 松尾彩音

1.はじめに

 「シェアカフェ」とは、1日単位で場所を借りて誰でも手軽に出店することが出来る仕組みで、日替わりで様々な店が営業される。青梅市にある「cafeころん」は、一際ユニークな形で運営され、地域に様々な影響を与えている。本研究では、cafeころんに注目して、その魅力と地域に対する役割を明らかにする。

2.調査方法

 cafeころんは、古民家を活用したシェアカフェであり、約13店が日替わりで出店している。オーナー、出店者(8組)および新たな活動を始めた空洞2号店に対するヒアリング、利用者に対するアンケート、およびカフェの観察調査を行った。

3.cafeころんの経緯にみる特徴

 cafeころんは、オーナーによるシフォンケーキのリヤカー販売から始まった。その中で、まちの現状に対する思いに共感した家主から古民家が提供され、ボランティアや寄付を集って手作業で建物を修復・改修した。シェアカフェには、運営方針に共感した出店者が集まり、それぞれが自由に営業しながら利用者の意見も反映させた店づくりを行っている。近所の人だけでなく、SNSをみて遠方からも客が訪れている。オーナーは出店者にcafeころんを足がかりにして青梅に新たに店を展開してほしいと思っており、使われなくなった駐車場の管理人室を利用した小さなコンビニなど実際に新たな活動が展開されている(図1)。

 このようにcafeころんは小さいことから始めることで少しずつ共感者が増え、多くの人を巻き込みながら活動を拡大されていることが分かった。

4.cafeころんを巡る人々の関わり

 調査結果をもとに、オーナー、出店者、利用者、という三者の相互の関わりと、青梅のまちに対する関わりを(図2)にまとめた。

 オーナーはまちの資源を利用し、活性化を目指している。出店者が気軽に出店しやすい仕組みをつくり、出店者が独自の店を営業する。利用者に対してリヤカーからSNSに至る情報発信を行うことで、近隣から遠方の利用者が訪れる。

 出店者と利用者の間には、交流が生まれ、利用者もアイディアを伝えたりアドバイスすることで店の成長を促している。cafeころんのまちでの知名度は、出店者にとって利用者を確保するのに役立っており、出店者もゆくゆくは店を独立するなど、まちに対する新たな展開が期待される。

 利用者はカフェの雰囲気を楽しみつつ、まちの中に新たな居場所を見出し、出店者との関わりでまちの情報に触れることができる。そして利用者は、口コミで新たな利用者を呼び込むなどまちに人を呼び込むことにも寄与している。

5.まとめ

 cafeころんでは、それぞれの主体が主体的に寄与することで、自分も周りも豊かになるような相互の関わりが生まれている。決して大きな取り組みではないが、小さな思いの連鎖が生まれ、まちが少しずつ豊かになることにつながっているのではないか。

(表1)調査概要
1.ヒアリング調査
・オーナー:2回調査。活動を始めたきっかけ、活動方法など、考えや目的を把握。
・cafeころん出店者:8組調査。利用目的や利用後の変化を把握。
・空洞2号店:1回調査。利用目的、利用者との関わり方を把握。
2.アンケート調査
・cafeころん利用者:11月17日〜12月13日の約1ヶ月間、アンケートBOXを店内に設置。店との関わり方、感じ方を把握。
3.観察調査
・cafeころん:10回調査。店舗に滞在し、お店の方とお客さんと関わり方、店内の雰囲気を把握。

(図1)cafeころんの展開
少しずつ様々な人を巻き込みながら、様々な人が関わりながら、取り組みが拡大していく
(図2)cafeころんからできるつながり
様々な主体やまちがcafeころんを通して互いに関わり合っており、互いに関わり合うことでcafeころんが成り立っている



2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新