卒業研究要旨(2017年度)

人を繋ぐコウシンカン

2017年度卒業研究 空間デザイン研究室 川上真由

1.はじめに

 2060年、栃木県足利市の人口は、現在の人口の半分近くの約7万人になると推計されている。今後、人口減少が進むことや、高齢者の1人暮らしや核家族が増加したことで、以前より地域の繋がりが減少し、世代間交流や地域と家庭での結び付きと支援力が弱くなり、地域へ関心が薄れていることなどにより、地域コミュニティの機能が低下し、市として維持できなくなり、他の市との統廃合などの可能性がある。

 歴史あるこの街を存続させたい。そのためには、人々が気軽に繋がることのできる、地域を担う基盤となる場が必要ではないかと考える。その役割を果たせる施設として、各地区にあり、周知の存在なのに、多くは一部の人しか利用していない公民館を、新しく地域を担う基盤を作る場として、新しい公民館を提案したい。

2.敷地概要

栃木県足利市に点在する17館の公民館
敷地面積:1776.68m2〜3630.55m2(こども館併設)
延床面積:531m2程度の建物が13館、700m2程度の建物が2館、1256m2程度の建物が2館
機能:ホール・会議室・図書コーナー・和室・料理室・事務室・倉庫・湯沸室・トイレ・談話コーナー

 グラウンドや体育館、公園やこども館が併設されている公民館もあるが、どの建物自体は、特徴がなく、どの公民館も似たり寄ったりな印象である。

3.計画

(1)コンセプト

 この公民館は、期間によって機能が公民館間を“行進”し、“更新”させて、公民館を中心に、様々な地域住民同士を“交信”させる。そして、それが街の“興進”に繋がる。地域のコミュニティの輪を広げ、街の“進化”の基盤となる公民館を目指す。このような公民館のまたの名を「コウシンカン」という。

 市内に17館ある公民館は、地域に開かれる公民館というだけでなく、地域を開いた公民館といった各地域の観光の拠点となる。観光客というこの街がなければ、巡り合わさらないような人々とも交流する出来る場とする。

(2)機能のしくみ

 公民館機能を、常設機能・更新機能と分ける。常設機能は、窓口業務や多目的室、ロビー空間や掲示板などからなり、各公民館に常時存在する。更新機能は、展示機能、図書機能、教育機能、飲食機能、交流機能などからなり、市内に点在する17館の各公民館を転々とする。よって、複合施設など広い土地を必要とせずに、今ある土地で様々な機能を置くことが出来ることになる。

(3)配置計画

・20フィートのコンテナに機能を点在させる。コンテナを使用することで、建物の移動を可能にする。
・公民館ごとにコンテナをそれぞれ違う配置、並び方にし、特色を持たせる。
・常設機能と更新機能を織物や石畳、門やお寺などと言った、足利市にゆかりのあるモノで、緩やかに繋ぐ。

(図1)足利市の公民館の配置
(図2)機能更新の仕組み
(図3)イメージ(模型写真)



2003-2018, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2018-01-23更新