卒業研究要旨(2017年度)

坂出人工土地:re

2017年度卒業研究 空間デザイン研究室 小池奈緒

1.はじめに

 坂出人工土地とは、大高正人が設計士、1966~86年に4期に分け香川県坂出市に建設された住居、商店街、市民ホール、駐車場などを持つ巨大な複合の群造形の建築。5.3mと9.0mの高さに約10,000m2の地盤を造り、その上に1~4階建ての市営住宅を建てた。地盤の下は商店街や駐車場となっており、人口増の時代、土地不足と、屋上権等の権利問題の解決、そして、新しい生活環境を想像するために設計された建築で、DOCOMOMO JAPAN選定日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選出され、日本のモダニズムにおける傑作でもある。しかし現在になって住宅の空き家率は30%を超え、商店街も空き店舗が増加し昼間はシャッター街と化している。「都市の新陳代謝(=メタボリズム)」を促すために使われることこそが建築家の意図であったが、新陳代謝どころかじわじわと壊滅を待つように感じられる。今こそ新陳代謝させていく時ではないだろうか。

2.敷地概要

所在地:香川県坂出市(JR坂出駅から徒歩5分)
敷地面積:12,714m2
人工土地面積:10,111m2
地盤上部:改良住宅(142戸)、集会場、広場、緑地帯、広場歩道
地盤下部:市民ホール、市営駐車場、通路・道路、緑地、改良店舗(15戸)、地権者所有店舗

(1)対象敷地

 必要なときに必要な部分を建て替えていくことがメタボリズム(新陳代謝)だと考えたため、耐震基準を満たしておらず補強工事が行われる1・2期の地盤下と住宅、及び、3期住宅部分を対象とする。

(2)現状

・空き家率30%を超えた住宅
・別途のアクセスを持つ住棟
・生活がはみ出したオープンスペース
・薄暗さを拭いきれない地盤下
・居住歴の差が生む非コミュニケーション

3.計画

(1)コンセプト

「:re」 reから始まる以下の言葉をコンセプトとして掲げる。

【reborn】再生する、生まれ変わった
【redo】もう一度やり直す、つくりかえる
【rejoin】もう一度仲間になる、再結合する
【reproduction】再生産、作り出す
【revival(revive)】命を吹き返す、復活
【reencounter】再会する

(2)地盤上、ランドスケープ計画

・とび出し、はみ出し、つながるテラス

 既存の階段室を撤去し、新たに階段室・外廊下(テラス)を新設。バルコニーが外廊下へととび出し、そこへ生活がはみ出し、そして地盤中央に開いた穴を囲むように既存の住棟をつなげ、住民同士のコミュニティの再建を図る。
 3層が別途のアクセスを持っていることから、地盤上には主にそこに住む人しか行くことはない。そんなオープンであるのにプライベートな空間という地盤上の特徴を活かす。

(3)地盤下

・戒壇巡り

 胎内巡りや胎内くぐりとも呼ばれる。狭くて暗い場所を通り抜けることによって穢れが払われて生まれ変わる修行。光に溢れた普段の生活ではまずないような本当の暗さを体感することで、改めて光のありがたさ、目の見える尊さを覚える。

(図1)人工地盤上の工期区分と改良住宅
(図2)イメージ(模型写真)



2003-2018, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2018-01-23更新