卒業研究要旨(2017年度)

人の集まる遊び場の魅力・要素をプレーパークから探る

2017年度卒業研究 空間デザイン研究室 及川美沙子

1.研究目的と背景

 こどもの遊び環境の貧困化が注目されている。こどもの遊んでいない公園も多い。一方でプレーパークにはいつもこども達が遊んでいる。本研究ではプレーパークに注目した。プレーパークとは、「自分の責任で自由に遊ぶ」ことをモットーとした遊び場である。「こどもがいきいきと遊ぶことのできる環境をつくること」を役目として、プレーリーダーが常駐している。遊び場に人の集まる魅力と、その魅力を支えている要素明らかにする。

 

2.調査概要

(1)観察調査

プレーパークむさしの(11/4,11/5)
戸山プレーパーク(10/26,11/1)
渋谷はるのおがわプレーパーク(10/27,11/8)
国分寺市プレイステーション(11/7,11/9)

(2)ヒアリング調査

 プレーリーダーに対して「こどもと遊ぶときに心がけていることは何か」について、またこどもの親に対しては「プレーパークを遊ぶ場所に選ぶ理由」についてヒアリングした。

3.観察調査結果

 プレーパークで観察できた遊びには鬼ごっこやベイゴマなどの「名前のある遊び」と、名前では表しきれない「名前の無い遊び」が見られる。「名前のある遊び」では「プレーパークならではの遊び」と「昔ながらの遊び」が見られた。そして、「名前の無い遊び」を「自由・工夫」の遊び、「挑戦」の遊び、「他者」がいる遊びの3つに分類した。これは、「名前のある遊び」から好奇心や向上心など、こどもの力で発展させた遊びである。こどもは元々、場を活かして遊ぶ力を持っており、それを最大限に出して遊んでいる様子が見られた。

4.ヒアリング調査結果

 プレーリーダーは、プレーパークの場づくりをしている。遊具の設置、安全確認といった場に直接的に関わること。振り返りミーティング、親、地域にプレーパークの理解を広げるといった間接的に場に関わることなどである。そして、プレーリーダーは遊びでこどもと接する際、どのプレーパークでも「遊びはこども主体であり、対等な立場で接すること」を心がけていることが分かった。例えば、「こうすれば良くなるのに」と思っても、指示はせずに、こどもの納得のいくやり方を見守るのである。

 

5.結果

 調査結果を元にこどもの遊びと、それを支える要素の関係を(図1)にまとめた。

 まず、プレーパークは普通の公園では出来ない遊びが出来る。そして、それをこども自身の力で発展させ「面白そう」「やってみたい」を実現できる。つまり、遊びを自分なりに自由に展開していくことができるのである。その遊びを通して、やがては自分らしく過ごせる「居場所」となる。これらがプレーパークの魅力であるといえる。

 この魅力の要素はプレーパークという「場」そのものである。そして、それはプレーリーダーの働きによって支えられている。こどもが主体となって遊ぶことは、こどもにとっては魅力的だが事故などの危険性を含む。実際、公園の自由度が無くなってしまった理由はこの危険性を取り除いてしまったことにある。しかし、彼らはそうならないように、遊びの場を常につくり続けている。

 遊び環境が貧困化している中、こどもたちが自分を表現できる場所はどこにあるだろうか。プレーパークは、こどもたちが自分のやりたいと思ったことができる貴重な場といえる。

(図1)こどもの遊びと、それを支える要素の関係



2003-2018, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2018-01-23更新