卒業研究要旨(2017年度)

町に広がるモノサイクル

2017年度卒業研究 空間デザイン研究室 齋藤遥菜

1.はじめに

 シェアできることが年々増えてきている。物や空間をシェアすること以外にも仕事や自分の能力をシェアするビジネスなどがあり、人と人がモノを通して関わり助け合っている。その広がりはネット上でのことが多く、顔の見えない形での取引が多い。時間も場所も選ばないため利便性はあるが、近いからこそ顔を見て繋がる安心感や会話から生まれる新しいアイデアなど、周りに影響されて助けられ1人の生活がより良くなっていくようなシェアの形があるのではないだろうか。

2.対象敷地

 神奈川県愛甲郡愛川町春日台3丁目にある春日台センター(スーパーマーケット)を含む商店街

・愛川町人口:40,868人(18,004世帯)
・春日台地区人口:3,253人(257世帯)
・春日台地区3丁目面積:130,533.8m2 ・対象敷地面積:5,358m2

・対象地様子:2007年3月20日に商店街の向かいにあった春日台病院が閉院に伴い活気を失う。現在、地区に住む人から存在すら忘れられているような空間となっている。

3.設計コンセプト

 モノが進化していく空間。様々な素材をリメイク・リサイクルされる工程を見える化し楽しめる修理工場。職人の技を見ることが出来、身近に再活用の意識を持てる。思い出のあるもの、資源となる物をこの場所へ持ち込む。モノは一度使うだけでは終わらない。持ち主が変わったり、崩して生まれ変わったり、再生させたりモノを再活用させる。モノの巡りで地域に暮らす人がつながる空間。

 職人がこの場所で働き、職人やそこで出会う人とこの場所で知識をシェアしながら物々交換のように町に情報や生活する知恵が人を介して広がる拠点となる場所。

4.設計イメージ

 工房や工場などの施設を室内室外から巡る。壁で囲われている道や天井がある道、幅が変わる道などのいろいろな道を巡って施設から施設へ移動したり、モザイクアートを探したり、目的無く散歩したりしながら時間が流れていく。この場所は目的の有無に関わらず過ごせるように、広場には休める空間や楽しめる空間をデザインした。

 現在の対象地の印象が商店街等の施設によって敷地が囲われて、ワークショップが開催されていても外からは目立ちにくく、顔見知りでないと参加しづらいと感じたため、開放的で外に発信していくデザインを意識して、門を設けずに広場のようにどこからでも入ることができるつくりにした。外からでもこの場所で何が行われているのかが伺えるように開口部を外に向け、建物の圧迫感を少なくできるようなデザインにし、歩道や車道にいる人にも興味を抱かせられるようにイメージ。

5.この場所の仕組み、ルール

 中間処理場以外は誰でも利用できる。受付にて分別の量や種類によってポイント券が発券でき、町内のスーパーマーケットやこの場所の施設などで使用できる。宝庫の利用に関して、職人が宝庫からモノを持ち出す際には宝庫内にある持ち出し表に記載してから持ち出すこと。職人以外でモノを持ち出す場合は受付に伝えること。

(図1)対象敷地
(図2)設計イメージ(模型写真)



2003-2018, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2018-01-23更新