卒業研究要旨(2017年度)

改 集合住宅

2017年度卒業研究 空間デザイン研究室 辻井香和子

1.はじめに

 現在の市営中野島南住宅は同じようなプランの住戸が並び、その枠の中にぴったり納まる家族のカタチはどのくらいいるのだろうか。規格のカタチを求めている人は少なく、どこか妥協しながら選んでいる人が多いのではないか。核家族が進んでいたりと家族形態やニーズが多様化している現代に対応できる市営住宅をはじめとした集合住宅が必要ではないかと考えた。そして一戸建ての人気が根強い日本では集合住宅=仮の住まいという意識が残っている。しかし、居住年数を見てみると20年以上住んでいる人が約半数である。仮住まいという概念をなくし、長い間住む家に対しての価値を上げ、様々な家族・生活のカタチが集まる中でそれぞれにあった集合住宅の提案を行いたい。

2.敷地概要

対象敷地:神奈川県川崎市多摩区中野島1丁目
敷地面積:約4086.5m2
用途地域:第一種中高層住居専用地域
構造:RC造 階段室型
階数:1号棟4階16戸/2号棟5階18戸

<現状>1号棟は4階建て16戸、2号棟は5階建て28戸の2棟で成り立っている。駅から約15分程度のところにあり、同じ敷地内には小さめの公園と小さい公民館が併設されている。中学校もすぐ近くにある第一種中高層住居専用地域である。背の高い建物は市営住宅と同じ5階建てのマンションが一棟あり、他は一軒家などの比較的背の低い建物が多い。

3.計画

(1)コンセプト

 様々な人が住み、集まる集合住宅なので多種な暮らしを受け入れることのできる市営住宅を目指す。生活を外にはみ出すことによって、意識せずに視野に入ることとなり、家の中でだけで生活が完結せず外と内の境界線が緩やかになる。

(2)デザイン

 必要な用途・大きさに合わせて外に部屋や突き出す場所をつけることにより必要空間を変えていく。外に付き出す部屋たちは様々な形にし、それらをつけることによって多様な生活のカタチに寄り添うことができる。外側の部屋は付け替えることができ、それによっていろんな人に対応することができる。 外側につけることにより凹凸ができ、複雑な外観になり、まちの顔となる。無機質な見た目にならないように各イエイエに緑を入れ、色を取り入れる。

(3)アプローチ

 外から家に入るときの道順は一通りの行き方だけでなく、様々な場所に居座れる空間を設置し、休憩や談笑ができる場にする。ふらっとそこを訪れることができ、そこが居場所になるように四方八方に道を散らす。

(4)公共空間

 住んでいる人全員が自由に使うことのできる空間をいくつか作る。場所や時間、行動を共にシェアできる空間を作ることにより、コミュニケーションの一歩になるようにする。同じ敷地内にある公園も周囲の人とつながりの持てる空間になるため、なるべく開かれた空間にし、入りやすい雰囲気を作る。使われていない公民館は廃止させ、代わりに公園に来た人々が休める場所・子供達を見守ることのできる場所の提供をする。

(図1)対象敷地
(図2)制作イメージ(模型写真)



2003-2018, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2018-01-23更新