卒業研究要旨(2018年度)

コミュニティ施設の分類・実態 〜横浜市旭区において〜

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 藤島志帆

1.はじめに

 現在、公民館・コミュニティセンター・文化センターなど様々なコミュニティ施設が多くある。中には地域住民によって運営されている集会所など小規模のものも多い。その情報は自治体で一元管理されているわけでもなく、実態はわからないことが多くある。
 本研究では横浜市旭区にあるコミュニティ施設を対象とする。名称と施設機能、管理形態に関係があるのか、地域においてどのような役割を果たしているのか解き明かす。

2.調査概要

 研究対象施設は神奈川県横浜市旭区にあるコミュニティ施設とする。横浜市旭区は人口約25万人、45の町丁目からなり、その平均の広さは0.744km2である。
 自治体で管理する13施設の他、地図情報等から小規模施設97施設を抽出とし、地域ごとの分布や施設名称を調査した。そのうち自治体管理施設9施設、小規模施設40施設を訪れ、建物・管理方法・利用実態などを調査した。

3.結果

3-1.施設の種類と特徴

 自治体管理施設は横浜市が設置したもので、大規模な「地区センター」6施設、小中規模の「コミュニティハウス」7施設がある。地区センターは独立施設で、会議室の他に体育館等を持つ。コミュニティハウスは、主に小学校に併設され、研修室・図書室などがある。いずれもスタッフが常駐している。
 小規模施設は単独型74施設、集合住宅などへの併設型が19施設であった。前者は○○自治会館と 呼ばれ町内で管理され、後者は集会所として、その集合住宅の管理者が管理している。規模は35〜270m2までばらつきがあるが、会議室・和室・調理設備・便所などが設けられていることは共通している。スタッフは常駐していない。

3-2.施設配置の特徴

 旭区の町丁目ごとに施設数をみると、表1のようになり、ばらつきがみられた。自治体管理施設がある地区でやニュータウン開発地では施設数が少ない傾向がある。複数の自治会で共同で運営する例もあった。

3-3.大規模施設と小規模施設の利用のされ方

 いずれもサークル活動や教室利用が多く見られるが、小規模施設では高齢者向けの活動が多く、大規模施設では子供や若い世代の活動が多いという違いがあった。大規模施設では比較的広い範囲を対象としたイベントがみられたのに対し、地域の会合や近隣の人を対象としたイベントは小規模施設のみでみられた。
 小規模施設は町会単位で管理され、その情報が掲示板や回覧板によること、利用料が無料であることなどが影響していると考えられる。

3-4.小規模施設の活発度

 小規模施設の利用頻度にはかなりばらつきがあり、(施設規模も関係するが)少ない施設は月に8回、多い施設は月に57回利用されている。自由参加のイベントを積極的に行っている施設も全く行っていない施設もある。
 人通りの多い場所への立地や、建物の新しさは活発な利用を促すが、それ以外にも予約状況や予約情報の発信の仕方や、清掃などの管理が丁寧に行われているかどうかも利用状況に影響していた。

4.まとめ

 旭区内には市による大規模施設に加え、町会単位で管理される小規模施設が多数存在した。これらは、高齢者のサークル活動や、近隣住民を対象にした活動などで盛んに利用され、大規模施設とは異なるニーズに応える役割をしていることがわかった。施設ごとに利用状況に差がみられたが、管理・予約状況をわかりやすく示す情報提供や、きちんと環境維持され、いつでも使えるような管理体制を整えることで、より活発な利用を促せるのではないか。

(表1)地域施設数ごとの町丁目数
(図1)地区センター
(図2)自治会館



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新