卒業研究要旨(2018年度)

ユーカリが丘の魅力と課題に関する研究

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 福田詩歩

1.はじめに

 千葉県佐倉市には「ユーカリが丘」というニュータウンが存在する。この街の特徴として不動産デベロッパーである山万株式会社が開発に着手してから45年にわたって年間の分譲戸数を約200戸に限定して人口バランスを保ってきたことや、不動産会社が造ったモノレールが街を1周しているという民間事業初の取り組みなど、独自の仕組みが多くあることである。本研究では、住民の声からわかるユーカリが丘の魅力と課題について調査をした。

2.調査方法

(1)インタビュー、ヒアリング調査

 商店連合会会長、山万株式会社社員、住民含め30人にユーカリが丘の暮らしについて調査した。

(2)アンケート調査

 暮らしの満足度や仕組みに対する認知度を訪ねるアンケートを2018年12月に実施した。図1のA、B、C、Dの計4地域を対象に750世帯に配布し、郵送回収で310の回答を得た(回収率41%)。

3.結果

(1)アンケート調査から

 ユーカリが丘は住民にとって満足度が高く、理想の街だと考える人が多い(図2)。特に住宅の住みやすさ、自然環境の豊かさ、落ち着いた雰囲気などの評価が高いが、交通の利便性については不満を感じている者も多かった。山万株式会社の住み替えサポートやその他のサービスは、実際に利用している人が多くはないが、半数の人にはその仕組みがあることで安心感をもたらしている。地域ごとにみると評価に差があった。居住歴が長い地域活動に積極的に参加をしている、近所付き合いが多い、などの地域のほうが満足度が高く、今後もユーカリが丘に住み続けたいと考えている人も多かった(図3)。

(2)自由記述欄、インタビューヒアリング調査から

 山万株式会社に対して、長期的な視点かつ住人目線で街づくりを行っているところや、地域全体をサポートしていることに対して、住民からの評価が高かった。また、長年ユーカリが丘に住んでいる人から「だんだん住みやすくなってきた」「高齢化も進んでいるが子供が増えてバランスがとれている」という意見が得られた。
 その一方で商業施設の撤退や交通事情に対しての不満も多く、一社独占型の街づくりに対する不安や不信感を訴えるコメントもあった。山万株式会社の進めようとしている街づくりの考え方と住人の求めるものが、必ずしも一致しているわけではないことが覗える。

4.まとめ

 ユーカリが丘は総じて満足度が高く、環境についても山万株式会社についても住民からの評価が高かった。ただ暮らしやすい環境が整っているためだけでなく、自ら地域活動に参加したり一緒になって街を成長させていこうという意識が暮らしの満足度を高めていることが考えられる。しかし、街の課題も現れてきた。山万株式会社の独占的な取り組みが住民の意志とずれてきているのではないかという懸念も生じている。また、住人の側の変化としても、新しい入居者ほど良い条件を求める一方で、一緒に街を作っていこうとする意識が薄れてきている可能性がある。

(図1)ユーカリが丘、A〜D地域概要
 所在:千葉県佐倉市
 総開発面積:約245ha
 総計画戸数:約8400戸、総計画人口:約30,000人
 現在人口:18,558人、世帯数:7,498世帯
 1971年に開発計画着手、1979年に分譲開始
(図2)街への満足度について(グラフ)
(図3)住み続けの意向について(グラフ)



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新