卒業研究要旨(2018年度)

八王子中心市街地で展開される「まちづくり活動」の現状と課題

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 星野利代子

1.はじめに

 近年、郊外の大型商業施設や駅周辺の再開発により、昔からある商店街が衰退しているという問題がある。研究では八王子中心市街地を活性化させようとする活動に注目し、そこで行われるイベントに関わる方々のそれぞれの視点を明確にし、八王子中心市街地で展開される「まちづくり活動」の現状とその課題ついて調査する。

2.研究概要

(1)調査概要

 八王子中心市街地、西放射線ユーロードを調査対象とし、イベント活動者、市役所、商店街の店、中心市街地付近に住んでいる方へインタビュー調査を行った。また中心市街地イベントへの参加。

(2)八王子中心市街地の概要

 甲州街道の最大の宿場町として発展し、産業では絹織物も盛んに商われていた。以前は百貨店を中心に栄えていた中心市街地だが、時代とともに街の中心部は駅周辺へと変化し、商店街の賑わいは失われていった。現在、居住者が増加しているものの、来街者は減少している。その中で近年、最も人通りが多い西放射線ユーロードを中心に、民間による新たなイベントやワークショップが開催されている。年間イベント開催数は50以上、西放射線ユーロードだけで年間20以上である。

3.「まちづくり活動」の特徴

 これまでの商店会などが主催する催事に加え、ここ5,6年民間によるイベントが盛んに行われている。その「まちづくり活動」は、商店主と住人が関わることを目的として、月に1度朝市の開催、空き店舗を活用したカフェ、共通駐車サービス券の発行、イベントと合わせて店を回るスタンプラリー等を実施している。

4.それぞれの立場からの意見

 調査から以下のようにまとめられた。それぞれ街に対する意識の違いが見られた。

5.考察・まとめ

 八王子の「まちづくり活動」は、人と人が繋がりを持ち、街をつくることを目指して行われている。実際にイベントを目的に街へ出るようになった人や、イベントの経験を得て自身で教室を開いた人がいる。イベントのある休日には、人の流れが増えたという。一方で、それぞれの立場にはギャップがみられた。まちづくりのプレイヤーは、イベントを活かして店の人も一緒に盛り上げてほしいという想いに対して、店の人はイベントに対してあまり関心がない。また、役所やプレイヤーは人との関わりある街を目指しているが、街を利用する人はかつての活気を求めている。「まちづくり」に対する考え方が共有されていないという課題がみえてきた。
 イベントがない時も人が訪れるようなまちづくりが必要である。店の人が商店街を盛り上げていこうと、それぞれの通りごとでお互い刺激しあうことができたら、より賑わいのある街となるのではないか。

(図1)地域施設数ごとの町丁目数
(写真1)ユーロード
(写真2)一坪パンまつりの様子
(表1)それぞれの立場から見る「まちづくり活動」と中心市街地に対してのコメント
・プレイヤー(まちづくり会社の人):
 <「まちづくり活動」に対して>人と人との繋がり。商品を求めて訪れるのではなく、人を求めて訪れるような街を理想とする。そのきっかけがイベントであり、八王子を知るきっかけとなってほしい。
 <中心市街地に対して>イベント数が増えている一方、イベントと店の人の関係が薄いことが課題。イベントを活かすかどうかは、店の人次第。また、それぞれの商店会が孤立しているため、会をまたいだ活動がしづらい。
・商店街の店主:
 <「まちづくり活動」に対して>イベントに向けて独自でサービスする店がある一方、大半は無関心。
 <中心市街地に対して>新旧で混じり合えていない部分がある。古くからの慣習や組織が存在している。それに対し、新しい人だけの組織もできる可能性がある。
・市役所(市街地活性課):
 <「まちづくり活動」に対して>目標の実現のために重要な存在であるプレイヤーのバックアップ。土台作り。
 <中心市街地に対して>公平、平等。直接住民らに働きかける事ができない。
・訪れる人、住人:
 <「まちづくり活動」に対して>認知、関心がない人もいる一方、魅力を見つけ、引っ越して来た人も。
 <中心市街地に対して>活気がない。催し物がない。店はそれぞれで孤立しており、まとまりがない。



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新