卒業研究要旨(2018年度)

太田市の新たな動線

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 柿沼優妃

1.はじめに

 太田駅は、群馬県太田市にある1日の乗車人数1万人を超える東武鉄道の高架駅である。群馬県内の東武線の駅では第1位の利用人数を誇る。
 今回対象敷地とする南口は、1966年に開設され、南一番街の誕生で賑わいをみせたが、富士重工業のお膝元で進出した車社会と、バイパス沿いに大規模なショッピングモールが点在している影響で、商店街は衰退し、歓楽街と化した。現在は駅周辺の商店街が潰れ、人通り、車通りともに激減している。一方で、2017年に太田市美術館・図書館が建築された北口では、衰退後の太田駅周辺にはみられなかった人の流れが新たに生まれている。
 今回の計画では、車社会の地域に対しての新たな街づくりの提案、太田市美術館・図書館によって生まれた北口の人の流れを駅の反対側である南口へ、さらにはその先の太田市へと流す「動線」の役割を提案する。

2.敷地概要 

 対象敷地:群馬県太田市 太田駅南口前地域
 敷地面積:約12000m2 
 特徴:長さ約400m、道幅約30m
 両脇に歓楽街の名残をとどめながら、整備された細長い通りは、歩行者の姿が見られないだけでなく車通りも少ない、寂しい一本道。 

3.設計コンセプト

◎車社会からの脱出=歩きたくなる街

 自動車1台当たり人口(1.11人)、運転免許取得率(対総人口71.7%)が全国一位の車社会である群馬県。その中で、車社会に警鐘を鳴らすべく太田市では、平成30年度よりマイカー以外の移動手段を確保するため、「交通まちづくり戦略」を実行している。
 そこで従来の、車に乗り自宅から目的地までを繋ぐ「直線動線」ではなく、車から降りて歩きたくなる「回遊動線」が描かれるよう仕掛ける。その動線は太田駅前から始まり、太田市全体、さらには太田市から群馬県中へ広がっていく。車社会の地は、歩くことを楽しめる地へ。

◎動線であり、居場所であり、施設である

 今回計画する通りは動線としての役割だけでなく、通り全体が太田市の新しい居場所であり、施設。
 歩きたくなる街づくりには、そこに出向きたくなる魅力が必要である。今回は、衰退した商店街の一階部分に手を入れ、通りに開く。シャッターの閉まった街並みは、太田駅前の動線を生む誰もに開かれる、新たな顔を持つ。

4.制作イメージ

◎通りをデザインする

 直線の通りに浮かぶ新たな大地は、今までの堅苦しく区切られた街の風景を豊かな風景へ。その間を通り抜ける人の流れは「川」、レベル差は「山」となり、自然溢れる駅前通りへと生まれ変わる。

(図1)対象敷地
(図2)イメージ1(写真)
(図3)イメージ2(写真)
(図4)イメージ3(写真)



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新