卒業研究要旨(2018年度)

実践女子大生の暮らしから見る日野

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 加藤夏実

1.はじめに

 日野市はJR中央線と京王線、多摩モノレールが通り、通勤や通学に適した立地環境である。日野市に住む実践女子大生はどのように日野市を使いこなしているのだろうか。本研究では、学生の普段の行動、交流、訪れる場所などを調査し、学生から見た日野市の実態を明らかにするものである。

2.研究方法

 11月7日〜12月10日にかけて日野市在住の実践女子大生44人(2年生7人、3年生15人、4年生23人)に日野市内での日常生活について聞き取り調査を実施した。44人のうち、3人は実家暮らしであり、4人は寮暮らしである。

3.結果

3-1.ピックアップされた地域の中の場所

 多くの学生が利用する場所の合計はコンビニが19箇所、スーパーが13箇所、飲食店が31箇所、アルコールを出すお店が16箇所あった。1人あたりの平均コメント数は14あった内、コンビニは1人あたり2.5コメント、スーパーは1.9コメント、飲食店は4.3コメント、アルコールを出す飲食店は0.9コメントであった。

3-2.個人のバリエーションの特徴

 日野市内に行きつけのお店があり、頻繁に通う「こだわりのあるタイプ」や、自転車で広範囲に活動する「アクティブなタイプ」、行動範囲は狭いが日野市内で過ごす時間が長い、「範囲は狭いが関わりは深いタイプ」、多少距離はあっても安さを求めて動く「節約重視タイプ」、家と大学と駅の往復だけの「外出派タイプ」など様々なタイプがあった。

3-3.コミュニケーションの場所

 コミュニケーションが起きている場所は、コンビニ、カフェ、飲食店、近所周辺が多かった。数こそは少ないが、寺、美容室、コインランドリー、ケーキ屋、小学校なども挙げられた。計40箇所で交流は行われており、道端や近所周辺を含んだ総コメント数は55であった。日野市内での地域交流は挨拶や軽い会話といった小さいレベルのものから、長時間話し込むといった大きいレベルのものまで幅広くあった。(表1)

3-4.好きなところ

 学生が日野市内で好きだというポイントには、いくつかのパターンがあった。坂上から見える夜景といった「高低差のある景観」、園児が集団で散歩している「子供のいる風景」、頻繁に訪れる「お気に入りのお店」、用水路や公園などの「緑や水がある街並み」などが挙げられた。

4.考察・まとめ

 今回の調査から、日野市には自然要素の多い景観が点在し、郊外都市にはない落ち着きと暮らしやすさがあることが分かった。近所間での交流は少ないが、コンビニや飲食店などでは人同士の小さい繋がりが大切にされている。全体に、1人1人が街の小さな関わりを大切にしていながら、自分に合ったライフスタイルを実現できていたのではないかと考察する。

(図1)事例1 Aさん/食生活学科4年
(表1)地域の人と学生のコミュニケーション
会話
・コインランドリーの清掃員と世間話をする。(事例38)
・ケーキ屋の店長が知り合いなので会いに行く。ケーキは買わないが、頂く事はある。(事例05)
・行きつけのバーで、常連の客と話す。(事例20)
・1人でカウンター席に座り、自分の話を聞いてもらう。(事例12)
アルバイトを通して
・日野市内の飲食店でアルバイトをしている。仕事仲間からおすすめの皮膚科を教えてもらった。(事例11)
・バイトが終わった後、スタッフと昼食を食べに行く。(事例42)
学業を通して
・小学校の授業補佐のボランティアをしている。街中で児童とすれ違う事もある。(事例04)
・ゼミ活動で定期的に地域の小学生と活動をしている。(事例09)
まちのエピソード
・コンビニのコピー機に学生証を忘れたら、家のポストまで届けてくれた。(事例30)
・怪我をしていた時、スーパーの店員が買い物中ずっとカゴを持っていてくれた。(事例22)
顔見知り
・どの時間にどの店員がいるかまで分かる。(事例13)
・週3で通うコンビニの店員のおじさんは、業務的ではなくフランクな対応をしてくれる。(事例26)
話しかけられる
・スーパーのレジの方が、雨が降っていた時に、雨止んだ?と声をかけてくれた。(事例16)
音楽を通して
・公園で弾き語りギターを演奏。お年寄りや子供達が演奏を聴いてくれた。(事例35)
挨拶
・寺で花見をしていたら犬を連れた人が挨拶をしてくれた。(事例03)
・登校中、近所の方が挨拶してくれる。(事例17)
・通学路に、誰にでも挨拶をしてくれるおじいさんがいる。(事例28)



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新