卒業研究要旨(2018年度)

コミュニケーションツールとなる団地

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 小林明莉

1.はじめに

 団地に家族で住み、子育てをおえた世代が多く暮らす町田木曽団地。長年住んでいるからこそ顔見知りが多く道沿いで交流している様子が見受けられる。しかし、数年後、新たな世帯がこの団地を受け継いで暮らして行くのか。見知った間柄ではなく、新しい知り合い、別の世代と出会い、知る環境が必要ではないのか。未来の団地の在り方とは、暮らすだけではなく、新たな役割を備え付けることで、団地の在り方を変えて行くべきなのではと考えた。
 様々な団地を探訪してみて、人々はあらゆるきっかけでコミュニケーションをはかっていると感じた。たとえば、団地1階にもうけられた花壇でガーデニングをしている人に、通りがかった興味を持った人が話しかけることで、コミュニケーションが生まれていたり、窪地で他団地からもバードゴルフをするために来る人のきっかけは、その窪地沿いに整備された散歩道にてたまたま見かけて共にやるようになったなど、思いもよらなかったところに、交流するきっかけはあり、コミュニケーションは隠れたきっかけひとつで、生まれるものだと考えた。  そこで私は、そのようなきっかけを刺し込み、団地をコミュニケーションツールとして生まれ変わった新たな価値をもった団地を提案する。

2.敷地概要

・対象敷地:町田市本町田町田木曽住居、ハ-21・ハ-22・ハ-25の3棟と団地間
・敷地面積:12500m2
 3棟で計170戸。団地間には駐車場・駐輪場・花壇・公園がある。単独世帯割合51%、生産人口割合60%、老年人口割合31%、居住者年数が20年以上である割合は35%という、1969年から存在する団地である。

3.設計コンセプト

 様々な形の家族、住民、訪れる人々と木曽団地に長年住む世代との交流をコミュニケーションツールとなった団地のによってうむ、そしてお互いを感じ、知る。
 どのような人が住んでいるのか何が好きなのか。団地に住んでいる人、買い物帰りに休もうと立ち寄った人や、団地にもうけられたコミュニケーションツールを活用するために訪れた人などが、お互いいつか交わるときのためのきっかけづくりの役割を、団地が担う。住民同士も、住むことで自分を発信、隣の人を知る、新しい自分の好きなものを見つける、交わる。

◎団地に寄る人

・道を行く人
・買い物帰りに少し休憩したい人
・たまたま会った知り合いとゆっくり座りながらもう少し話をしたい人

◎団地で暮らす人

・自分の趣味とめいっぱい暮らしたい人
・自分の作ったものを売ってみたい
・創作したものをみてほしい(絵・陶芸など)
・得意なことを生かした教室を開きたい
→訪れる人が見つけられる
『趣味・暮らしをみつけられる・感じるつくり』
『趣味をみせる・発信できるつくり』
・趣味をきっかけに会話をする。
・自分もはじめてみる。(発見)

4.設計デザイン

 きっかけが団地に入り込んでいるイメージ。それにより、団地ごとのツール化をはかる。
 四角い箱状の閉ざされた団地を新たに空間を加えることや、削ることで、箱の中の暮らしを外に開かす。団地間や団地1階に心地いい空間や休憩所、ワークスペースなどをもうける、登りたくなる階段で自然に訪れ、住民の暮らしに遭遇する。

(図1)対象敷地



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新