卒業研究要旨(2018年度)

柿の実幼稚園 〜屋外空間の魅力〜

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 吉橋叶乃子

1.はじめに

 川崎市にある柿の実幼稚園は豊かな自然の中にある広大な敷地で、1000人もの園児がいる大規模な幼稚園である。園長先生の想いによって裏山に遊び場や、ツリーハウスやアスレチック、泥んこになって遊べる場所も多く作られている。こうした豊かな環境が園児達に与える影響について明らかにしたい。

2.調査方法

 対象施設の概要を表1に示す。調査は保育時間を対象とし、屋外空間で園児の動きや会話を観察し、施設平面図に記録する。事前調査として5/12、5/19、6/27、7/13の4日間、本調査は10/22〜25の計4日間、9時〜15時までの6時間行った。

3.結果

(1)場所と遊具

 園庭には人工芝(A)と遊具部分(B)には、園長先生がこだわり選んだ様々な遊具がある。職員室付近(C)はせせらぎや池など自然が近い。裏山(D)には畑や探検路、園長先生手作りの遊具がある。

(2)遊ぶ場所と時間

 朝と帰りの1時間は園庭、先生の声かけや保育室が裏山にある場合は裏山にて自由に遊ぶ。その他は各クラス保育になり、保育室の場所にもよるが、週2回程度で裏山にて屋外遊びやピクニックも行う。

(3)それぞれの場所での遊び方

 各場所での遊びの様子を表2に示す。
 園庭の芝生部分(A)では基本的な外遊びが行われ、遊具部分(B)では、多様な遊具を工夫して遊んだりコミュニケーションの場としている様子がみられた。協調性や挑戦力を学んだり、運動能力の向上が期待できる。職員室付近(C)は、自然の素材を使って様々に工夫した遊びがみられた。裏山(D)では、手作り遊具で自然に触れたり、山全体を使って季節の植物や実に触れることで、自然を体験する機会になっている。

4.まとめ・考察

 園内にある様々な遊具や自然、その全てを使って遊ぶ園児達は幅広い体験をしている。園庭、遊具では遊びの基本や体力をつける。手作り遊具には、愛着を持ち遊んで欲しいという園長先生の想いが反映されている。裏山では園児にとっては毎日が発見の連続であり、自然の優しさ、刺激を受けその中で園児達は自分たちで楽しむ方法を主体的に見つけていく。園庭と裏山の両方備わっていることで限られた時間の中でも濃い時間を過ごし、伸び伸び育つことが期待される。それは2割いる障害児が区別されることなく幼稚園生活を送っていることにも繋がっているのだろう。

(図1)対象施設の図
(表1)対象施設
・所在地:川崎市
・開設:1962年
・施設面積:役10000m2
・園児数:約1000人
・施設職員:200人
・クラス:37クラス
(表2)それぞれの場所での遊び方
A:
ボール遊び…サッカー、PK戦、ドッジボール
リレー…園庭一周であったり、目印を決めて直線で走る姿。
鬼ごっこ…(遊具部分も含め)走り回る姿。
お話…寝転がったり、座ったり、そこから側転などの運動遊びへの遊びが展開する姿。
B:
二宮さんの憩の泉…夏場は水遊びの場として、冬場は石の上でおしゃべりする姿。
丸太…上に立っていたが、寝そべり、座ってお話の場になり、さらにドーンじゃんけんぽんを行う姿。
すべり台…踏切を作り、質問をし答えるまで滑らないと言う遊びの展開、お互いにやり
あう姿。
C:
木登り…年中児、年長児が登っている姿が見られ、年少児はその横にある像に登っていた。
からくり時計…決まった時間になると音楽が流れ、音楽にあわせ揺れたり踊り出す姿。
なかよし池…池を覗きこみ鯉を見る姿や、池の上の飛び石をわたる姿や水に触れる姿。
憩のデッキ…木になる実を柵の上に乗り取る姿。
D:
かりんの実…手に持っている姿。そこから室内保育への発展。
葉っぱ…お金や火おこしなど見立てて遊ぶ姿。
なかよし砦…高さがあることもあり恐怖心に打ち勝つ必要があり、遊ぶことに憧れを抱く姿や園長先生の手作りでお気に入りと言う園児の姿も。
ブランコ…周りの柵を椅子代わりにしてお話や鉄棒として遊ぶ姿。



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新