卒業研究要旨(2018年度)

棚と暮らす棚ダラケ寮

2018年度卒業研究 空間デザイン研究室 吉野歩那

1.はじめに

 私が4年間住んでいる実践女子大学学生会館は、坂下の大学から徒歩30分弱(自転車で15分程度)のところにある。大学に合格して上京すると決まった時、4月から右も左も分からない大学生活と、した事の無い一人暮らしを同時に始めるのは困難だと考え寮を探した事がきっかけで住み始めた。友達に大学の学生寮に住んでいると話すと、学生寮があった事も知らずに一人暮らしをしている子もいるなど知名度は低い。
 また、学生会館は大学からも遠いうえ、とりわけ住んでいて楽しい事も無い。イベント事の参加者は半数以下がほとんどで“仕方なく住んでいる”人が多いと感じる。せっかく住んでいるなら周りから刺激を受けたり、高め合えたり、楽しい思い出を沢山作れるような場にしたい。また、居心地の良い場になるような仕組みを組み込んだり、地域の人にも必要とされる建物を目指す。
 そこで、快適性や利便性よりも魅力にに引きつけられて住みたいと思ってもらえる新しい寮のかたちの提案をする。

2.敷地概要

 対象敷地:実践女子大学 合宿所とその周辺
 敷地面積:1372m2
 入居可能人数:60人
 用途:1階 合宿所+学生、地域の人がくつろげる空間
    2階以上 学生寮

3.設計コンセプト

 知らない人と一緒に暮らす経験が出来るのは今だけだから、この学生時代にしか経験出来ないことを経験出来る場にしたい。例えば地域の人と積極的に関わったり、寮で行われるイベント事には全員強制参加で寮生同士も積極的に関われるようにすることで、先輩後輩で情報交換したり、刺激を受け合いたい。また、話の広がる空間を作り出す。
 『ダラケ』とは、一見悪い意味にも捕えられるが、棚だけの仕切りで気が緩められないように見えて、自分の生活する空間を自分で作り、棚だからこそ生活が自分の空間におさまらず、はみ出る緩さを指す。

4.制作イメージ

『棚だらけ』
生活すること=モノが増える
モノの処分=こまめにする事ではない
◎気づいたらあふれているモノ
 服(下着・靴下・ベルト帽子を含む)・本・鞄・靴
◎寮生活で部屋に必要なモノ  食べ物・パソコン・洗面用具・バスグッズ・ケトル・タオル・日用品(箱ティッシュ・基礎化粧品)・テレビ・寝具など
→これらは棚を自由に使い収納してよい
 冷蔵庫・キッチン・洗濯機・机・ベッド・洗面台
→これらは棚に埋め込む

プライベート空間はあるが完全に閉じた空間では無いからこそ生まれる会話、趣味・好み・性格が自分の棚に現れるからこそ生まれる会話や関わりがあると考える。 全ての空間棚だらけで棚に囲われている。トイレ、シャワー室、大浴場は向こう側の見える棚ではなく、壁一面棚になっている空間にする。<[p>

〈地域の人との関わり〉
不必要な物を予め一部の棚に置いておき、地域に開放した際、好きな物を好きなだけ持って行って良い。そこで好み、趣味の話題で話が広がる。また、モノの処分に繋がる。 

(図1)制作イメージ



2003-2019, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2019-01-17更新