卒業研究要旨(2019年度)

P225 〜集い暮らす街〜

2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 藤嶋優梨子

1.はじめに

 家族の在り方やカタチの変化により、人々の”イエ”での過ごし方や”イエ”へ求めるものが多様になってきている。都市部に人口が集中し核家族、単身世帯が増え、戸建ての住宅から縦に連なる住まいのカタチに変化してきた。現在の集合住宅のプランは、多様な携帯の家族を受け入れられるように、規格化されたどれも平凡で味家も個性もない”万人受け”するプランがほとんどである。また、住人同士トラブルを避けるようルールで住民を縛っている。

 万人受けのするプランは上辺は皆一同に住みやすいプランであると感じている。しかし蓋を開けると規格化された枠組みに押し込められ窮屈を窮屈と感じないように考えが固定されている。このようなことを解決するための1つとして、パタンによる設計で提案する。

2.敷地概要

●対象敷地 「パークハイム狛江」(東京都狛江市東和泉3-14)
住戸数:309戸(+10部屋:商業施設/事務所)
住人数:約1000人
敷地面積:11,708.52m2

●周辺環境
北側に小田急線和泉多摩川駅、駅前商店街南側に土手、河原、多摩川

3.設計方法

 パタンランゲージをもとにオリジナルでパタンを考えた。自分の部屋、家の中、マンションの中の”あったらいいな”を追求しパタン化。思案した225個のパタンを組み合わせ、部屋内部の間取りの小さなパタンから、住人同士のコミュニティの場、商店街・和泉多摩川駅からのアクセス、多摩川へつながる道とマンションの関わり方の大きなパタンを散りばめたマンションを設計。

 部屋や住戸に閉じ込ませず、自然とソトヘ向かわせ、“住まう”以外の商店や広場、憩いのスペースを設け、マンションの敷地内から緩やかに住居に繋がっていけるような、パブリックな空間とプライベートの空間をつなげられるように、パブリックなスペースにプライベートがはみ出し、反対にプライベートの空間に人が入り込めるような空間を形成する。集合住宅だからこそ、年代を超え、様々なヒトが集い住まうことへの意義を見出していく。世代を超えたコミュニティが増えることで、共働きの親を持つ子ども、育児に悩む親、居場所のない学生、単身世帯、老人の心理的な孤独を取り除き、生きる活力を見出させるマンションを提案する。

4.住民の日常

 駅を降りると草の匂いがした。マチを歩いているとガラス張りの窓からあたたかな光があふれ出している。駅から多摩川にかけてのびる大きな道とそこを通行する人々(図1)。当たり前の日常光景だが、まるで多摩川と街とマンションが『おかえり』と言っているように感じる。今日はどの道でかえろうか、どこに寄り道しようか、そんなことを考えながら家路につく(図2)。大きな道から小路に入り、自分の家への3つ目の入口であるエレベータを待っていると、こどもの笑い声が上から聞こえた。きっと共用テラスでままごとでもしているのだろう。1階にいるこどもと大きな声を出してお喋りしているようだ(図3)。

 エレベーターを降り共用廊下を歩いていると、いつもいる場所に犬がいない。散歩にでも行っているのかと思うと、小さな窓からひょっこりと顔を出す犬と目が合った。(図4)縁側に座わりお喋りに夢中なおばあさん達が突然「今日は寒いから家の中なのね。」とッ話しかけてきた(図5)。家と家の合間を縫いようやく自宅に着く、今日は多摩川を見ながら出窓で寝よう(図6)。



2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新