卒業研究要旨(2019年度)

まちとしせつ 〜高齢者の暮らしと街のあり方〜

2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 萩原菜月

1.はじめに

 東久留米市は高齢化率がH30年度では28%になり、75歳以上の後期高齢者の人口が、65歳以上75歳未満の人口を上回っている。高齢者単身世帯の比率は多摩26市中5位と高い状況にあり、高齢者夫婦世帯の比率は多摩26市中で最も高くなっている。地域の高齢者コミュニティ形成を促進するための活動も行われているが、認知度も低く参加者が少なく、利用者をより増やしていくことが課題となっている。現在、市内に高齢者施設は複数箇所あるが、住民が住んでいるのにも関わらず生活感が感じられず、外に出ている住人を見ることはほぼない。建物だけが周りの環境と遮断されているように感じる。

 そうした問題から、高齢者になってからも地域とまちに関われる環境作りを行い、そこに住む高齢者が生き生きと暮らせる施設を目指したい。そこで、まちに住んでいる地域の人たちが集まれるような高齢者向けの複合施設の提案をする。地域の繋がりを活性化することにより、高齢者の生活を豊かにし、より良い生活を送れるようなきっかけが生まれる施設を目指す。

2.制作概要

施設種別:介護付き有料老人ホーム、ショートステイ、デイケア、店、ジム、浴場、カフェ
人数:80人
対象者:60代〜の自立している人から要支援1〜要介護5認定を受けている人まで
老人福祉法に準ずる施設とする。

3.対象敷地

東京都東久留米市東久留米駅周辺
敷地面積:96m×95m9120m2

 徒歩1分圏内に幼稚園・小学校・駅がある。東久留米市は昭和30年代後半からひばりが丘団地を始め大規模団地の建設とともに移り住み長年そこに住んでいる人が多い傾向にある。病院は隣の市には大規模病院が集中しており高度医療技術も揃っている。

4.制作コンセプト

「趣味を通してまちと関わり地域と暮らす」

 高齢単身者、高齢者夫婦の新たな家になる、地域の街と施設をつなぐ複合施設を目指す。高齢者だけでなく、施設の周りに住んでいる地域の人々も自由に利用で、趣味を広められる場・学ぶ場・働ける場で、年齢関係なく交流できる場を通して地域の繋がりを深める。高齢者の居場所形成を趣味を通して促進することにより、新たな出会いを高齢者の人でも築ける場ができ、施設に行くことが目的となる。限られた交流ではなく、様々な人が施設に集まることにより、施設が人の新たな集う場の役割を果たすようになる。

5.制作イメージ

 高齢者が住む個室に、趣味の場として小さい部屋を隣接させ、一つの住居とする。道路、遊歩道に趣味の場を開き、地域の人々や施設に住む人々が趣味の場を通して交流する。施設内に地域の人々が一緒に利用できる共有スペースを設け、年齢関係なく入り交じる。そこにカフェ、お風呂、勉強スペース、ジムなどの要素を入れ込む。居室では寝るだけで、他の生活の行為を共有スペースで行うように拡張する。高齢者施設の閉鎖的で暗いイメージをなくすために、壁や塀を作らず、敷地内の様々な場所や遊歩道を通して見守り、地域の目を行き渡らせる。

趣味の場の過ごし方:
60代〜、自立〜要支援2:趣味の場を通して様々な人と交流し、通りを挟んだ住人と顔を合わせ交流を深める場として過ごす。
70代〜、要介護1〜3:趣味の場を施設内に住む人や近隣の方と共有したり、貸出を行い地域の人と関わりながら生活する。
80代〜、要介護4〜5:趣味の場が向かい合う形になる部屋に移り住みリビングを通して会話や人の集まりに参加する。

(図1)配置図



2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新