卒業研究要旨(2019年度)

SGDs

2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 近藤眞実

1.2034年2月13日の見学記録

 何やらすごいゴミ処理場ができたとネットで話題になっているらしい。写真には今までにない形の建物が写っている。かなり巨大な施設なようだ。夜になればガラスの壁は光で中の様子が丸見えで市場の中に立っているゴミ処理場の存在感が増している。ということで今回は実際にその建物の見学をしに行ってみた。

 ゴミ処理場と聞くと、町外れの誰も知らない場所にひっそりと佇む、厚い壁で覆われた建物を想像する人が多いのではないだろうか。ところが、そんなNIMBY施設として捉えられるゴミ処理場のイメージをひっくり返す建物ができた。その名も「SGDs」だ。

 それは東京都江東区豊洲六丁目にある。ゆりかもめ新橋駅から乗りレインボーブリッジを通り過ぎ市場前駅で降りると突如現れる巨大な施設。この少しキノコのうように見える外観は近藤眞実のデザインによるもの。「SGDs」とは「Special Garbage Disposal Site(すごいゴミ処理場)」の略称である。

 このSGDsは焼却場と市場とリサイクル工場と展示室の建物からなっており、焼却場の中ではなんと子供から大人までが遊べるアスレチックも備わっている。私は先に焼却場に足を運びたい気持ちを抑えて、リサイクル工場兼展示室を覗くことにした。

 この建物は市場関係者の駐車場を持ち合わせていてこれも大きな建築物だ。リサイクル工場ではいつでも予約なしに見学をすることができる。このリサイクル工場では容器包装プラスチック材料リサイクルの現状の見学ができ、現場を見て再生の技術や仕組みを学ぶことができる。

 リサイクル工場を見学した後、上の階へ上がると粗大ゴミで出された家具のアート展示がなされている。無価値そうに見えるゴミもアートになるということを教えてくれる場所であった。家具のアート展示も見終え、待ちに待った焼却場の方へ向かうことにした。

 建物に近づくにつれその巨大さに圧巻される。なんせ現在建てられている建物の中で世界最高の高さを誇る建物だからだ。これが建てられる前はBurj Khalifaが828mで最高で、このゴミ焼却場は830mになるそうだ。建物に到着するとまずガラス張りの市場が出迎える。天井高は最低で7mの高さになっておりターレの上げ下げで天井を突き破ることがないようにされていた。ガラス張りなので中で何が起こっているのかよくわかる。

 市場の中心に目をやると何やら黒っぽい建物が見えた。何かはわからずエレベーターでゴミ焼却場の見学できるスペースの階まで行った。扉が開かれるとまず現れたのはゴミの滝だ。下を眺めるとゴミピットに集められたゴミであることがわかった。食べ物を扱う市場のど真ん中にゴミ処理場。おそらくこれを見て何も思わない人はいないだろう。焼却場の内部にはたゴミの滝を眺めることのできる飲食店も設置されている。臭いは全く気にならない。

 上の階へ行くと、ゴミを処理するための機械と空中散歩をすることのできるアトラクションや、巨大滑り台を高い場所から行うことができ、爽快感を味わうことができた。見学に来たのではなく遊びに来ているかのようだった。日が落ちふと外に目をやると、ガラスの窓から見える夜景はスカイツリーとは比べ物にならないほどの絶景だった。

 ゴミ処理場といえば少し堅苦しいイメージを持っていたが、見学はもちろんゴミ処理場でできる他の可能性を知ることができた。ゴミを処理するための場所だけではなく、そこから市場の流れを見ることができたり、高い建物だからこそできるアトラクション、ゴミ処理場の存在感をアピールすることで生まれる親近感があった。  この建物は今までにない、外観を楽しむだけではなく中でも楽しめる新たなすごいゴミ処理場になっているのではないかと思う。

2.建築概要

所在地:東京都江東区豊洲6丁目
主要用途:清掃工場・市場・リサイクルセンター・ギャラリー・店舗
敷地面積:407,000m2
建築面積:337,911m2
延べ床面積:668,930m2
最高高:830m

(図1)イメージ



2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新