卒業研究要旨(2019年度)

WA 〜人と人を繋ぐ地区センター〜

2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 根目沢ひかる

1.はじめに

 日野市には、「地区センター」と呼ばれる小規模な公共施設が400mの間隔で66箇所存在している。地区センターの作られた目的は、様々な世代が活動できる場、地域住民の親睦や自由な市民運動の場となるためである。しかし、日野市民でも地区センターの存在を知らない人は多く、利用率も全体的に低い。

 地区センターが日野の中で日常的に使われ、地区センターを通して人と人が交流し、学び、価値観を共有し、楽しむことが日常生活になる。これが今後の地区センターだと思う。地区センター同士を連携させ、町内会・自治会の人だけでなく、日野市民のどこの人でも行きたくなる地区センターを目指す。

2.地区センター概要および対象施設

 地区センターは、建築年は1965年〜2018年、面積45〜210m2と小規模で、戸建てタイプ、マンション併設タイプ、児童館等との複合タイプ、もとは神社の社務所を利用したものなど、形態は多様である。会合や活動で使う洋室・和室、キッチン、便所等の設備は共通する。基本的に自治会ごとに地区センターがあり、管理は自治会等に委託されている。使用率は50%を超えているものもあるが、中には1%に満たないものもある。

 66箇所の地区センターをすべて訪れ、建物の特徴、周囲の状況、利用状況などを把握した上で、日野本町、栄町、日野台、大坂上近辺を対象地域と定め、11カ所の地区センターの改修を行う(表1)。

3.設計コンセプト・制作イメージ

 11カ所の地区センターに対して、建物や立地の特徴を活かし、表1の11科目をそれぞれメインの機能として設定し、改修を行った。それぞれ科目に応じた機能に特化し必要な設備や空間を設けることで、地域の中に新しい特色ある居場所となることを目指した。小さいながらも多様な機能をもった魅力的な居場所が、街の中に数多く出現することになる。同時に、多目的に使える空間を残し、地区センター同士で連携した活動やイベントにも対応できるものとした。

 全体的に、これまでの暗い、汚い、古いというイメージを払拭して気軽に立ち寄れる雰囲気をつくるため、デッキや縁側を設けたり、窓を大きくして内部の様子がわかるようにし、街に対して活動の様子が発信されることを重視した。室内も壁はなるべく撤去し、軽く間仕切ることで、互いの活動の気配や視線が感じられるように配慮した。

4.新しい地区センターへ

 これまでの地区センターは自治会単位で運用され、近い距離にありながら外の人には排他的な雰囲気もあった。各地区センターが個別の機能をもつことで、住む場所だけでなく、趣味や居心地によって利用者が場所を選ぶことができ、自治会を越えた利用や交流が進むことが期待できる。利便性だけでなく、風通しの良さとコミュニティを兼ね備えた地域づくりの拠点となる。さらに、全地区センターで連携したイベントなどを行うことで、日野市全体で楽しめる仕掛けとなり、日野市以外の人も訪れるきっかけともなり得るだろう。新しい地区センターによって、日野で生活することが楽しいと思えるライフスタイルを提案していきたい。

(表1)対象地区センターと機能
 地区センター名/科目/機能
 日野台2丁目/国語/小さな図書館
 栄町2丁目/算数/シェアオフィス、学習スペース
 新東光寺/理科/町の実験室
 四ツ谷/社会/高齢者・障害者カフェ(溜まり場)
 多摩平6丁目/英語/外国語カフェ
 東光寺東/体育/トレーニングジム
 大坂西/総合・道徳/フリースペース
 日野台1丁目/家庭科/料理教室、裁縫教室
 日野台/保育/子育て広場、お母さんの情報交換
 東光寺/音楽/練習スタジオ、発表の場
 西が丘/図工/制作工房

(図1)東光寺東地区センター
(図2)多摩平六丁目地区センター
(図3)改修イメージ(左:東光寺東、右:多摩平六丁目)



2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新