卒業研究要旨(2020年度)

住宅でおどる

2020年度卒業研究 空間デザイン研究室 木村保菜美

1.はじめに

 どんな住宅でも、その空間の中で自分自身の個性を生み出すために試行錯誤し自由に生活できる人がいる。また、与えられたその環境・空間をそのまま受け入れ定型的な聞いたことのあるような生活を送る人や、そもそも住宅における生活空間に興味のある人とない人がいる。様々な住み手のなかで、自分が住宅を使いこなしていないことに気づいていない人。つまり、使いこなすという選択肢を持っていない人。言い変えると、使うことしかできない人がいる。そのような人が増えていけば、住宅のデザインの価値や意味がどんどん小さくなっていくのではないかという危機感を感じた。

2.敷地概要

対象地:架空の敷地(埼玉県郊外の住宅街)
敷地面積:約500㎡
住宅周辺の特徴:駅からは遠い。(バス停は徒歩圏内にあり。)

3.コンセプト

『住宅を使いこなすというコト~使う人と使いこなす人~』
 住み手が住宅で躍ることで、理想の住み手である「使いこなす人」をさらに生み出す。「使いこなす人」が、すでにある住宅やこれからの住宅の価値や意味を高める。

4.計画

4-1.住宅と住み手の評価

 住宅での住むこと・暮らすことにおいて他の選択肢を知らない、もしくは、選択肢を作ってしまい制限されている住み手を「使う人」とした。一方で、住宅の基本的な空間や機能などを使い、さらに試行錯誤し自分の個性を住宅に反映させながら生活する自由な住み手を「使いこなす人」とした。
 「遊園地な住宅」を図1右上の部分「使い方の制限が大きく、暮らしの制限が大きい住宅」とし、「原っぱな住宅」を図1左下の部分「使い方の制限が小さく、暮らしの制限が小さい住宅」とする。ここで、「使い方の制限」は、動線や機能によるその住宅の利用方法の制限を表し、「暮らしの制限」は、アフォーダンスによる制限を表す。
 「原っぱになる遊園地(図1右下と左上部分)」の中でも、今回の調査では分類されなかった図1右下部分の「使い方の制限が小さく、暮らしの制限が大きい住宅」を制作する。

4-2.アフォーダンスによる生活の制限

 人と生活の生まれる場所・ある場所として、柱や梁や壁を建てる。柱と梁が、住宅内の空間の機能を分断しながら、生活を大きく制限していく。
 一方で、壁は外壁のみで、室内を区切る内壁はなくす。これによって、住み手の空間利用に大きな自由が生まれ、住み手それぞれのスタイルから試行錯誤された生活が組み上がっていく。

(図1)有名住宅分類表
(図2)構造模型



2003-2021, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-01-23更新