卒業研究要旨(2020年度)

観光客から住民へ

2020年度卒業研究 空間デザイン研究室 笹本いづみ

1.はじめに

 静岡県下田市は、数年前から、財政力の問題や人口減少、少子高齢化が進んでおり、2017年には総務省が規定する「過疎地域」に指定された。「10年後、20年後は冬、どうやってこの冬を耐えていくのか考えたい」と市長が語るように、このままでは明るい未来は描きにくい。
 近年、都市からの移住が注目されている。2019年には下田市に22人もの移住者が定住し、移住・就業支援金制度を利用した移住者は全国1位となった。しかも、コロナウイルスの影響で働き方や生活が激変している今、都心からもアクセスしやすい「下田」の土地に新しいライフスタイルを提案できるのではないか。
 そこで、地方に移住するというハードルを下げ移住者を増やすための提案を行う。下田の未来を明るいものにしていきたい。

2.敷地概要

対象敷地:静岡県下田市1丁目
敷地面積:約9500m2

 ここは伊豆急下田駅から徒歩3分ほどの場所に位置。観光地への通り道になるため多くの人がアクセスしやすい。しかし、現在は空き家やシャッター店舗が多く暗い印象になっている。

3.設計コンセプト

 街の中を実際に見て、歩いて、泊まって、過ごす…と段階的に関わりを深める仕掛けを考え、街の中に散りばめた。具体的な段階として「日帰り」「1泊」「1週間」「1ヶ月」といった滞在期間によって区切る。

i)日帰り(きっかけ)→市民や移住者を見て感じる
ギャラリー等を設け、気軽に利用できる仕掛けを。

ii)1泊(関わる)→下田市民の人柄を感じる
民宿や直売所、飲食店、足湯、温泉等で市民と関わり、会話や交流する仕掛けを。

iii)1週間(暮らす)→下田の日常を感じる
シェアハウスでの食事、洗濯、運動、ぼーっとする時間など、土地柄や地域柄を感じ取る。

iv)1週間(仕事)→生活感を感じる
空き家の1棟貸し出しを行い、家でのテレワークやコワーキングプペースの利用、地域イベントを運営など、仕事をしていく中で市民とより深く関わる。

v)下田市民 →新しい出会い、新しい知識を学ぶことで、今まで理想だったのもがビジネスとなり現実に。

→誰もが関わりを持ち様々な人が交わる街

4.制作イメージ

 古い町並みや下田らしさを残しつつ、仕事や日々の暮らしが交わる新しい空間を創造。様々な人が行き交う新しいライフスタイルを提案する。

(図1)対象敷地図
(図2)計画案



2003-2021, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-01-23更新