卒業研究要旨(2021年度)

住む学び舎 ~学生のエネルギーを活かす学生寮~

2021年度卒業研究 空間デザイン研究室 伊皆晴香

1.はじめに

 私は現在学生会館に住んでいる。他大学の学生も含め70名ほど住んでいるが、交流の機会や場所はなく、ここに住んでいる意味を見出せない。

 学生寮のように「大学生が集まって住む」ということは、とても貴重で価値のあることだと考える。それは、大学生自体が将来への可能性を秘める貴重な存在であることと、集まって住むことでお互いに刺激を与え合いさらなる成⻑を期待できるからである。それにもかかわらず、大学生の能力を最大限伸ばせるような学生寮は少ないと感じる。大学では学べないことを学べ、経験できる学生寮があれば、学生の能力の向上に期待できるのではないか。

 そこで、様々な大学の学生同士が交流やコミュニケーションを通し、自身のさらなる成⻑や新たな価値の創出に繋げることのできる学生寮を計画する。そして、そこで得た学びや経験を周辺地域で活用することで、学びの定着とともにまちの活性化にも期待できる。そのような、学生にとってもまちにとっても意義のある学生寮を目指す。

2.設計概要

対象地:架空の敷地(海、山、都市の3か所) 敷地面積:(1か所につき)約1,660㎡ 建築面積:約750㎡

定員:50名 設備:ふろ、トイレ、洗面所、キッチン、ダイニング、研究室、工房、トレーニングルーム、個室等

3.設計コンセプト

『学生同士を様々な方法で交流させることで、多彩な能力を伸ばす』
寮内で学生同士が個人的・社会的な活動を通じて交流することで、学生が持っているエネルギーを最大限引き出す。そこから大学の授業以外の学びを得ることで、成⻑や経験に繋げる。そこでの学びを周辺の地域に発信していくことで、学びの実践とまちの活性化に繋げる。

4.計画

 各学生寮1つを50人単位とし、全国に点在させる。いずれはこのような学生寮をさらに増やし、全国どこにいても有意義な学生生活を送れることを目指す。それぞれの寮同士はオンラインで繋がり、定期的なミーティングで情報を共有し、学生同士の知識の拡張と交流のきっかけをはかる。

 寮での生活は基本的に全て自分たちで行う。ルールなどは寮生が自分たちで決め、分担して行っていく。それにより、協調性や責任感を身に付ける。

4-1交流のためのしかけ

1)キューブと隙間

・キューブ型の個室と交流のための部屋を混在させる。そして、それらをずらしたり積み重ねたりして隙間をつくる。その隙間は、学生が居場所をつくるなどして自由に使う。また、交流のためのしかけ(机やイスを置いたり、隠れ家のような空間をつくるなど)も詰め込み、生活の中で自然と交流が生まれることを目指す。


・個室は1部屋2人ずつで、基本は寝るためだけに使う。勉強や身支度、休憩などは個室の前のスペースや共用空間で行い個室にこもらないようにするとともに、人と会う機会を増やす。

2)生活の核を中心に

おふろやキッチンなど必ず使う部屋を中央に設けることで、移動するきっかけをつくる。移動することでより多くの学生と交流を持つ可能性が生まれる。

4-2周辺地域に対しての活動

1芸術活動 2ボランティア・支援 3商売・ビジネス 4学び・研究 5スポーツ・フィットネス 6植物の栽培

この6つの活動は学生が必ず行うものとし、これらをもとに地域の人との交流やイベントを行う。

(図1)交流の例(写真)



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-02-09更新