卒業研究要旨(2021年度)

伊勢崎銘仙で変化するまち

2021年度卒業研究 空間デザイン研究室 小谷野梓

1.はじめに

 私の地元である群馬県伊勢崎市は中心市街地の過疎化・高齢化が問題点としてあげられる。今回対象敷地としてあげた伊勢崎駅南側の人口減少が市内でも特に進行している。商店街は廃れ、人通りは少なく、伊勢崎市郊外へ人が流れている。

 明治から伝わる伝統産業の伊勢崎銘仙は、昭和初期では、日本人女性10人に1人が着用していたおしゃれ着、普段着の着物である。生地が丈夫、色と柄が豊富でお洒落な縞模様や手作りの風合いがある。しかし、今の若い世代は存在すら知らない人が多い。現在、後継者不足のため生産も難しく、このままでは伝統産業が廃れていく。

 今回の計画では、伊勢崎内でも印象の弱い銘仙を広げていくために、地元の人が気軽に立ち寄り、無意識に銘仙と触れ合い魅力を知ってもらう場を提案する。そして、銘仙のように明るいまちになることを目指す。これにより、伊勢崎市街地の過疎化・高齢化の抑制、伊勢崎銘仙を後世に残していくことができる。

2.対象敷地

〈対象敷地〉群馬県伊勢崎市本町20−1SOAビル
〈敷地面積〉2558.7m² 東西に約65m×南北に約40m
〈アクセス〉伊勢崎駅から徒歩15分 北側に接する二号線の目の前にバス停がある。
〈敷地特徴〉北側の大通りを100mほど進むと、「いせさき明治館」(銘仙の資料館)がある。周辺は飲食店や住宅地だが、古い建物が立ち並び歩いている人はあまり多くない。目の前の二号線は車通りが多い。

3.設計コンセプト

 現在の閉鎖的なSOAビルを建て替えて、様々な世代の人が集まり交流する場としたい。目的地となるような場所を設計し、駅から歩いたときには、いせさき明治館を通らせ、銘仙の存在を広める。

 銘仙を建築空間に取り入れ、布の特性である伸びる・縮む・揺れるといった変化や、自然を利用した光・時間によっての見え方の変化を楽しむ。硬い建築物の中に柔らかな銘仙があることで落ち着く空間となる。

 建築だけでなく、着ているところも見て楽しめるファッションショーのできる場を設ける。そして、歩いていたら偶然ファッションショーが行われて立ち止まったり、ショーを目当てにわざわざ来たり、銘仙についての興味を持たせる。

 また一般の来場だけでなく、後継者育成のための宿泊施設を設け、銘仙の教育の場にする。銘仙に少し興味のある人から本格的に学びたい人まで泊まり込みで滞在できる。銘仙をきっかけに伊勢崎に訪れる人も増え地域活性化に繋がる。

4.制作イメージ

 左右の建物の用途や布の見せ方が異なりながらも、高さや広さを対象にして統一感を出す。東側の建物はそれぞれの部屋を外側に突出させたりレベル差をつけルことで、外から見た時に様々な銘仙の表情を見せることが出来る。鮮やかで柄の多い銘仙の特徴を活かして部屋を色どり、色ごとに人の感情を作り出す。西側の建物は、ジャングルジムのように上下左右視界が開けている。建物全体に銘仙を使用し、銘仙の中をかき分けて進む。これによって、建物内をぐるぐると歩き回らせて意図しない方向へ行き、新しい出会いとなる。また、それぞれの部屋から見える景色の変化を楽しむ。半屋外にして外から中の様子を見せることによって、人を引き込ませる。

(図1)敷地周辺地図 (図2)1/200模型



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-02-09更新