卒業研究要旨(2021年度)

誰もが集う一人暮らし 〜一人だからこそ〜

2021年度卒業研究 空間デザイン研究室 村上晶海

1.はじめに

 私は大学1年生の頃から一人暮らしをしており、寂しさを度々感じてきた。例えば一人で食材の買い出しに行き、一人で食事をするときは特に寂しさを感じ、熱が出た時は誰かに助けてもらいたくなる。単身者の多くは自分と同じように一人の寂しさを抱いて生活していると考える。さらに、賃貸物件では音を立てる行為=迷惑という暗黙のルールがあり、静かに暮らす事を強制されている。SUUMOの調査では、400名中49%が生活音に対して不満に感じていると回答しており、賃貸住宅での近隣トラブル第一位が騒音問題という結果がある。以上の現状から、一人暮らしが寂しく、窮屈な選択肢になってしまっているのではないかと考える。一人暮らしは寧ろ、一人だからこそ自由でいいのではないか。一人暮らしをただの仮住まいと考えるのは非常にもったいない事ではないか。そこで、新たな単身者専用の賃貸物件を提案する。

2.対象敷地

敷地:東京都日野市新町1-27-2一帯
敷地面積:約332.4㎡
日野駅から徒歩5分。ドラックストア、スーパーマーケットが徒歩4分で目の前に保育園がある。

3.設計コンセプト・設計概要

3−1.設計コンセプト

「誰もが集まりライフスタイルを共有できる居場所」

 居室を最低限に抑え、生活を外に出す。その様子を展覧会のように観覧しながら住まう賃貸住宅を目指す。生活の様子を共有することで様々な暮らし方が許容される自由な住まいを設計する。

3−2.設計概要


居住者:30名
延床面積:324.685㎡、150.9㎡
居室数:South棟18室、North棟12室

 居住者がどこにいても誰かの生活の様子が目に入る形を設計した。そうすることで寂さを無くすと同時に多様なライフスタイルを許容する空間を考える。まず床をバラバラにし、目線が様々な方向に抜けるようランダムに配置する(2)。次にそれらを階段で繋ぎ、踊り場のような場所を作るように設計する(3)。この形にすることによって、様々な場所に散りばめられた踊り場を思い思いに使いこなす様子がどの場所からでも共有され、住民同士が寂しさを補い合うことができる。その様子は多様なライフスタイルとして許容され、自由で快適な一人暮らしができる空間を考える。また、誰もがこの場所に集まれるよう、建物に一回り大きい殻を被せ、躯体との空間に居場所を設ける(4)。そうすることで人を内部に引き込むことができ、住民だけでなく多くの人との交流のきっかけとなる住まいになるよう設計する。この住まいでは図2のように活動的な生活が生まれる。

(図1)設計概要
1)空間を3階建てに分ける。 2)床をバラし、レベル差をつける。 3)点在させた床を階段で繋げる。 4)一回り大きい外殻を被せる。
(図2)居住者の生活の様子
(図3)近隣住民の生活の様子



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-02-09更新