卒業研究要旨(2021年度)

アートセンターから育む「芸術のまち」

2021年度卒業研究 空間デザイン研究室 渡邉真穏

1.はじめに

 新百合ヶ丘駅前は「昭和音楽大学」「日本映画大学」「川崎市アートセンター」などの芸術・文化施設が充実しており、駅周辺には恵まれた住環境を求めて、多くの芸術家や文化関係者が移り住んできている。現在までの30年間「芸術のまち」としての確立、地域活性化や地域ブランド化を目指しているが、アンケートの結果、回答数の約7割が「芸術のまち」を認識していなかった。また、近頃はローカルな店がなくなり、新百合ヶ丘らしさやコミュニティが薄れている現状がある。

 そこで、芸術関連の情報発信をする場やアートとの関わりをもたらす空間として積極的に利用するべき「川崎市アートセンター」を建て替え、今ある新百合ヶ丘のポテンシャルを生かしながら、身近なところで芸術に触れることができる空間を作ることで、「芸術のまち」を根付かせ、コミュニティ形成につなげて地域活性化を図りたい。

2.敷地概要

対象地:新百合ヶ丘駅から約300mに位置する神奈川県川崎市麻生区万福寺6丁目「川崎市アートセンター」を核とし、新百合ヶ丘駅北口からの通りに空間を点在させる。
アートセンター敷地面積は2,138㎡。
北口には商業ビルやマンションが立ち並び、昭和音楽大学や映画大学がある。
敷地横の緑地高低差は24.6m。

3.設計コンセプト

「芸術と歩き、芸術に取り込まれる。」

 現在の川崎市アートセンターは閉鎖的で硬い印象を受ける。また、駅北口の利用者は目的がある人がほとんどで、足を運ぶ人も限られてしまっている。

 そこで、駅から「川崎市アートセンター」までの通りに、立地を生かしながら芸術に気軽に触れ合える空間を点在させる。新百合ヶ丘駅の利用者が、生活の延長線に立ち寄れる環境から芸術に取り込まれ、芸術の経験がない人もその場で創作活動のエネルギーを感じ、芸術への興味と身近さを生み出すことで、芸術のまちを根付かせる。

4.制作イメージ

 点在空間は、通りに面している商業ビルの屋上に設け、施設を利用する人々が利用することを図る。アートセンターの敷地横が緑地という地形を生かし、断面に高低差をつける。

 周辺施設に大きなホールがあるため、アートセンター内はセミフォーマルな劇場を設け、ワークショップなどを中心に活動する場とする。また、レベル差をつけ、正面に面している全ての空間がステージやショーケースとなりうる空間を目指す。

 北口から歩く人の視線で興味を引くよう、インパクトも意識し、正面に面している通りから、創作活動の音やエネルギーを感じて足を運んでもらう。点在空間は、様々な芸術分野の体験ができ、芸術を五感で感じてもらうことを狙いとする。

(図1)敷地図
(図2)模型写真



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-02-09更新