卒業研究要旨(2022年度)

二世代の遊び場から紐解く芸西村の地域環境

2022年度卒業研究 空間デザイン研究室 中山あゆみ

1.はじめに

 調査対象の芸西村は、高知県東部の沿岸部に位置する農村地域である。本研究では、自然や地域環境に触れる機会が多い子ども時代を対象に、子ども時代を芸西村で過ごした二世代(子世代、親・祖父母世代)に遊び場所をヒアリング調査する。遊び場の形成範囲や遊び方に地域環境(土地・人間)が与える影響について考察する。

2. 研究方法

 7月8日~10月1日にかけて芸西村に住む子ども世代15人、親・祖父母世代14人の計29人にヒアリング調査を行った。ヒアリング内容は、遊びのエピソード、地域の人との関り、娯楽施設、お祭りである。芸西村のどこでどのような遊びをしているのかを書いた1人ずつの「遊び場マップ」を作成した。

3.世代の特徴

表1のような遊びが抽出された。親・祖父母世代では、「自然・地域」「道具・遊具」「集まりが必要なもの」が多く、道具も大人や自分で作ることが多い。子ども世代では「道具・遊具」が多く、購入した道具が多かった。「自然・地域」「集まりが必要なもの」が少なく、自然と人との関り方に変化が見える。

4.遊びの特徴 

 両世代に共通する遊びの特徴として、「探検」「自然・生活との一体」「大人との関り」の3項目を見出すことができた。

 「探検」には、自宅の塀の登り降り、用水路脇の探検、洞穴探検、自転車で村内の自分の知らないところに向かう探検等がある。好奇心から探検をし、冒険心・想像力が働いた子供たちは、そこで秘密基地作りを始めたり、遊び場として活用し始めたりする。遊びの中で発見した場所を子供たちが手を加え、遊びを拡大・発展させている。神社・寺・宮の境内を探検し、秘密基地を作ったり、境内の落ち葉を木の枝で掃き、きれいにしたりする等、自分たちの居場所を作っている例がある。

 「自然・生活との一体」では、川・池・ダム遊び等で、網や釣り道具、素手で魚やエビ捕り、川に飛び込む、自宅横の池での行水等がある。川やダムで捕った魚等をおかずにする等、遊びだけでなく生活の一部となっている。

 遊びを通した「大人との関り」も多い。地域の大人に身長に合わせた竹馬を作ってもらう、田んぼでオタマジャクシ捕りを一緒にする、海水浴、夏の夜に涼み台(縁台)でおばあさんの怖い話を聞く等、遊びから地域のコミュニティを築いている。

5.遊びを支える地域環境の要素

 上記の特徴は芸西村の「自然溢れる農村環境」「農村ならではの社会的環境」が支えている。農村は自然に人の手が加わった環境であるため、子どもでも関りやすく、季節で大きく状態が変化することで、遊びに幅を生んでいる。田畑は仕事をする大人と、遊びに来る子どもが自然とコミュニケーションをとることができる。地域コミュニティが形成・発展していくことで、遊びや生活の知恵が継承される。

(表1)抽出した遊び



2003-2023, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2023-02-10更新