卒業研究要旨(2022年度)

音楽で人と出会い、共有し、繋がる空間

2022年度卒業研究 空間デザイン研究室 西方葉月

1.背景・目的

 予備調査から、現在は音楽を1人で聴く人が多いと分かった。同じ曲を知っている人々の共有体験は主にライブ会場で行われ、誰もが知る曲が減っている。また、リアルな場で感情を共有する機会も減り、心の拠り所がなく孤独を感じてしまう人が増えたと感じる。そこで、私が音楽の醍醐味だと考える、言葉を交わさなくても繋がりを感じられる共有体験ができる場所を提案する。

2.敷地概要

対象地:埼玉県さいたま市南区別所7丁目
JR武蔵浦和駅東口側のロータリー周辺
敷地面積:約6800㎡

 現在は、東口改札からライブタワーに直結している歩道橋やスーパー・お店付近、埼京線と武蔵野線の連絡通路に人通りが多い。武蔵浦和の人口は増え、忙しなく人が行き交っているが、駅から出ると人は散っていく。人通りの多い場所がそれぞれの場所で完結しているため、ロータリー周辺で人の流れをつくり、そこに音楽を入れることで繋がりが生まれ、安らげる場所になってほしいと考え、この敷地を選んだ。

3.設計コンセプト

『音楽を共有することで、繋がりが生まれる広場』
 巡っていくことで音楽の聴こえ方や見え方が変化し、行くたびに新たな音楽や人に出会える場所を目指す。音楽と多様な関わり方ができるようにし、誰もが同じ空間で新たな音楽を聴いてみる機会をつくる。

4.設計イメージ

 連絡通路に新たに改札をつくり、仕事や勉強をする場所を設ける。専用のアプリにあるアップテンポの曲から選択でき、入れた順番に曲が流れる。連絡通路からロータリー周辺にいざなう。 歩いていくことで、見え方が変わるよう、広場をあらゆる高さに点在させ、立体的な関係をつくる。広場は、同じ場所で複数の役割を果たす。

広場1:聴こえてくる音楽を共有
  生演奏を聴く/バス停のアナウンスとしてこの敷地で披露された曲が流れる
広場2:懐かしさを共有
  生演奏・レコードを聴く/ホームにいる人のBGM
広場3:楽器同士で共有
  ピアノ同士で・他の楽器・歌・ダンスと合わせる。
  聴いていた人もカウンターテーブルを開くとキーボードになっていることで参加も可能
広場4:ボックスから共有
  スタジオの各ボックスで外の様子を見ながら練習。扉を開けることで各ボックスから一緒に披露
広場5:安らぎながら共有
  足湯やハンモックで、生演奏を聴く。
  専用のアプリにあるミディアム・スローテンポの曲から選択でき、入れた順番に曲が流れる
広場6:関わり合って共有
  聴く人同士で会話が生まれる。カホンで参加。披露された曲のCD等を飾っていき、貸し出しができる

 広場1→2→5と進むと、だんだんとゆったりした空間、広場1→3→6と進むと、だんだんと人と関わる空間というように、あらゆる場所からそれぞれのストーリーが生まれる。 また、春と秋の年に2回、各広場からロータリーの島に集まっていくフラッシュモブイベントを行う。

(図1)東口改札を出たところから観たロータリー
(図2)模型写真



2003-2023, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2023-02-10更新