卒業研究要旨(2022年度)

港から繋がるアプローチ

2022年度卒業研究 空間デザイン研究室 杼木和香奈

1.はじめに

私の地元である奄美大島は、人口約6万人が暮らす、日本の島の中で3番目に大きい島である。2021年7月に世界自然遺産に登録されたこともあり、今後観光客は増加すると考えられる。
来島するには飛行機またはフェリーだが、現在使用中の名瀬港は老朽化が指摘されており、利用客は1日に約200人と少なく、数万人が暮らす島の玄関口としては殺風景な印象を持つ。
そんな名瀬港と市街地の間にはマリンタウン地区があり、観光施設や遊戯施設などの整備が進んでおり、繋がりを断ち切られているようにも感じる。
そこで、名瀬港から市街地までの繋がり方見直し、フェリーで来島し、歩きたいと思えるような名瀬港から市街地までのアプローチを提案する。

2.敷地概要

対象地:鹿児島県奄美市マリンタウン地区一角     及びその周辺 対象面積:約15000㎡

既存の名瀬港から南へ約200mの場所に位置するマリンタウン地区は、奄美大島の北西部に位置し、北側を東シナ海に対して開け、他の三方は陸地に囲まれる天然の良港としての形状を有する。 また、市街地(屋仁川通り)から名瀬港までは徒歩15分とアクセスもよいといえる。

3.コンセプト

市街地へのアクセスもよいマリンタウン地区の一角にフェリーターミナルを配置し、フェリーから降りて、市街地まで歩いてもらうことを目的とする。歩いて移動することで、ゆっくり流れる島時間を感じてもらい、出会った人とコミュニケーションが取りやすいアプローチを目指す。

伝統建築の一つでもある生垣を、街へと誘導する手段の一つとして利用する。また、ランダムに生垣を配置し、細かく空間を分け、視界が限定することでプライベートスペースを作り出す。

5.設計方法

5-1.建物

1200mm×1200mmのデッキを基本とし、点在させることで全体的に統一感をもたせる。そしてデッキの中央部分を吹き抜けにすることで、見上げる、覗くといった周囲を楽しむ行為を誘発させる形状とする。また、400mm×400mmを基本とした空間を、通りに沿って配置することで道を形成し、歩く途中の休憩スペースや人と関わり合うフリースペースとなるよう設計する。

5-2.道

地上レベルには、メインストリートと裏道の2種類の通りを設ける。メインストリートは建物や広場によって形成し、直線にすることで、初めて通る人でも分かりやすく招き入れていく。裏道は生垣によって形成され、メインストリートの裏にひっそりと通う。この通りは曲線をえがいており、見えない向こう側へと意識を誘い、奥へと引き込むに従って、道を抜けた先に対する期待感が膨らんでいく。

2階レベルは、すべてデッキやブリッジで繋がり、2階レベルのみを通って移動する。高低差がつけられた床の上を歩くことで、視線が色々な方向に動き、移動するにつれて風景をどんどん展開させる。

周辺の景観を楽しみながら歩けるよう、身体スケールに合わせて、小さく細かく設計する。

(図1)敷地地図
(図2)模型写真



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2023-02-10更新