卒業研究要旨(2023年度)

中高生の居場所としての青少年施設における研究
〜利用の違いから見る第3の居場所の存在意義〜

2023年度卒業研究 空間デザイン研究室 浅川留奈

1.研究の背景と目的

近年、中高生を対象とする青少年施設などの居場所づくりの研究が重視されている。本研究では施設を利用する中高生やスタッフの利用実態や意識を明らかにし、さらに利用者にどのような変化が起こるかに注目することで、「中高生の第3の居場所」としての役割や存在意義などを考察していく。

2.調査概要

 児童青少年センター『ゆう杉並』と調布市青少年センター『CAPS』の2施設を対象場所とし、中高生を対象にアンケートとヒアリング調査、スタッフにヒアリング調査を実施した。調査期間と集計結果は以下の表1.2に示す通りである。アンケートとヒアリングの質問内容は表3に示す通りである。

3.結果の概要

 利用者の男女比は7:3と男子の方が多い。学年は中学2年〜高校1年生が多い。自宅が市区内である者は全体の7割、学校が市区内である者は全体の8割と近隣からの利用が多い。利用頻度は毎日来る、週に2〜3回、週に1回という利用者が合わせて全体の6割であり利用率は比較的高い。一緒に過ごす人の割合は“同じ学校の中の知り合いと過ごしている人”と“施設内の友人やスタッフと過ごしている人”とでほぼ同等の結果になった。施設ではバンド活動やスポーツ・ゲーム・勉強など様々な過ごし方がある。施設を選択する理由は“好きなことが出来る”“設備が整っている”“無料”が多く見られた。

4.居場所としての特徴

(1)居場所としての利用目的・意識の多層化

 利用頻度による違いを見ると、利用し始めた段階では“人と話す・活動をする”など特定の目的で利用されることが多く、慣れ親しんだ環境になっていくことで利用目的が一つに留まらず、様々な目的で利用されるようになる。初めはその場の“環境を受け入れる“、次第に”居心地の良さや享受感を実感する“、さらに”自分自身のことについて考える“”施設に貢献する“など場所に対する意識が変化していく。(図1)

(2)「第3の居場所」独自のコミュニケーション

 施設内で、他の利用者と直接的な交流を望む者もそうでない者もいる。しかし、直接関わるわけではないが、互いに存在を感じる【居合わせる関係】が「居心地の良さ」に繋がっていた。また、スタッフの存在は、悩み事を相談したり、新たな価値観や知識・経験を得たりと、家や学校とは異なる「斜めの関係」として大きな存在であることがわかった。

5.家や学校とは異なる場所であること(図2)

(1)“制限”から“自由”に解放される場

 中学生では、学校の先生から、高校生では他の生徒の目から自由で居られる場として認識されている。「先生と生徒」「クラスや学年」「家族」といった固定的な関係は、“閉塞的かつ拘束的な場所”という側面を持つ。「第3の居場所」はこれらの制限から解放され、自由に自分らしく過ごすことができる場所として彼らにとっての重要な「居場所」となる。

(2)新たな価値観・経験・関係性を得られる場

 施設内で固定的な関係から解放された様々な人と接することで、人間関係の範囲が広がり、新たな知識や経験を得る、新たな価値観を得られるなど新たな発展に繋がっている。運営委員として運営・企画に携わるなど、施設に対して自主的・主体的に関わることで、新たな挑戦の場、自己成長の場にもなっている。

(表1)CAPS集計
(表2)ゆう杉並集計
(票3)アンケート・ヒアリング内容
(図1)利用者の意識の変化
(図2)学校・家庭・第3の居場所の関係



2003-2024, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2024-02-20更新