卒業研究要旨(2023年度)

若者の日常生活におけるインターネットとのつきあい方

2023年度卒業研究 空間デザイン研究室 富所友香

1.背景・目的

携帯電話やパソコンの普及により、ところ構わず情報入手や発信を行うことが可能となり、学習の場も広がっている。本研究では、一人ひとりの勉強空間と選んだ理由を調べ、多様な勉強空間の意味や環境の質について考察する。

2.調査概要

本学科3・4年生20人を対象に、主に試験期間の勉強場所について、室内の様子を描いてもらい、その時の様子、理由などについてヒアリングを行った(図1)。※作業空間を必要とする模型製作などは除いた。

3.勉強空間と勉強の状況

勉強場所について、自宅のみは5人、15人は自宅以外の場所も利用しており、大学図書館やカフェ等が挙げられた(表1)。1回あたりの勉強時間は、自宅では休みを挟んで長時間化し、カフェや図書館は集中して時間をとっている。自宅以外の場合、PCを持ち込むより持ち込まない人が多く、勉強時にはイヤホン等で音楽を聴く人が多い(表2・3)。

4.場所の選び方

その場所を選ぶ理由を大きく、利便性、刺激のコントロール、自由度、モチベーション、の4項目に分類し、自宅、図書館、カフェで比較した(表4)。

 自宅は最も馴染んだ環境で、環境条件は整っており、時間・行動の自由度も高い。阻害要因となる他者はいない反面、気が散りやすい要素も多く、緊張感が保ちにくい環境である。

 図書館は、比較的空いており、静かで騒音等は少ない。阻害要因となる他者は、阻害されにくい座席を選ぶことでコントロールしている。余計な刺激がなく、他者の存在が緊張感を与え、周りも集中していることから勉強しやすい(共行為効果)。

 カフェでは他者が自由に過ごし、ざわつきがあることが緊張感を下げ、勉強に取り組みやすい。他者に刺激を受けて集中し、そんな自分に優越感を感じるなどモチベーションを高めている(観衆効果)。

5.まとめ

場所を選ぶ理由から、環境に求める要素の違いが表れていた。中でも他者の存在は、勉強の際の阻害要因にも促進要因にもなり得ている。自宅は1人の空間のため、他者から阻害されない反面、他者によるモチベーションも高めにくい。図書館は、阻害要因としての他者をコントロールしながら、他者によって自由度を制限し、勉強に集中せざるを得ない状況に追い込むストイックな環境となっていた。一方カフェは、他者の存在が自由度を高め、勉強へのハードルを下げるとともに、他者に認識されることが勉強のモチベーションに繋がるような、他者にインスパイアされる環境と言える。

(図1)調査例(事例N)
(表1)勉強場所
(表2)勉強状況)
(表3)1階あたりの勉強時間
(表4)勉強場所を選ぶ理由



2003-2024, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2024-02-20更新