卒業研究要旨(2023年度)

PPP を活用した公園の実態調査

2023年度卒業研究 空間デザイン研究室 伊藤綺花

1.研究の背景と目的

近年の都市公園では施設整備・更新を持続的に進めていくために官民連携(PPP)の取り組みが行わ れるようになった。本研究では、この制度を適用し た公園の実態を調査し、設定された目的と合致して いるか、そこから生まれる公園の魅力や役割は何か 考察する。

2.調査概要

池袋エリア、恵比寿・渋谷エリアの計 7 公園(表1)の公園を対象とする。平日、休日それぞれ110 時 ~午後12時、214時~16時、317時~19時の3つ の時間帯に訪れ、観察調査した。

3.調査の結果

7 つの公園を調査した結果、それぞれの公園に興味深い特徴や役割があった(表 1、図 1・2)。それらの特徴は、公園の立地や規模だけでなく、デザインやイベントなどの要素が深く関わっていることが分かった。

4.考察

PPP を活用した公園は、立地や文化、生活など地域によって異なる点に着目して計画されている。そのため、各地の特徴を活かした公園ができる。それは、全ての人が平等に利用できることを前提とする公共の公園ではできないことである。

PPP を活用した公園の中で、特徴に特化しすぎた 結果、利用者や利用場面が限定されすぎている公園 も見られた。一方で、同じ空間で公的と私的の二つ が混在し、個々が思い思いの過ごし方ができる公園 (=共存)も存在し魅力的であった。

PPP だからこそ実現した「共存」の魅力は、今後 の公園に応用できるのではないか。

(表1)調査対象地概要および評価
池袋西口公園:出会いが生まれる劇場空間の創出「国際アート・カルチャー都市」実現の核となる公園
中池袋公園:ハレの場・パブリックスペースのコア
南池袋公園:都市のリビング
IKE・SUNPARK:公園から街が変わる・公園が街を守る
恵比寿南一公園:大人の街・恵比寿に昔の空き地のようなあそび場
MIYASHITA PARK:MIXXXX & MEEEET
北谷公園:YOUR CANVAS PARK〜公園で描く自分色〜

(図1)南池袋公園 調査データ
・芝生で「座る・寝転ぶ・寝る」などの行為が見られた。
・芝生エリアでは一人利用が見られなかったが、サクラテラスでは様々なグループの利用が見られた。
「リビング=個々の集団が思い思いの過ごし方ができる、集合の場」ではなく「リビング=個々が思い思いの過ごし方ができる、共存の場」と捉えると、広い芝生やキッズエリア、サクラテラスなどを含む公園全体が「リビング」と言えるのではないか。
(図2)北谷公園 調査データ
・イベント時は公園外まで情報を発信でき、適度な距離感で参加することができる。
・平日2の時間帯は昼休憩の時間で、飲食をする利用者が見られた。
日常と非日常のどちらにも対応できる公園。地域の特徴を活かしたコンセプトに特化した公園だが、この公園だけの魅力であると言える。



2003-2024, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2024-02-20更新