卒業研究要旨(2023年度)

放課後子ども教室の実態 〜立川市「二小くるプレ」を事例として〜

2023年度卒業研究 空間デザイン研究室 城間愛実

1.研究の背景と目的

小学生の放課後生活に対する国の施策は「学童保育」と「児童館」を中心に整備されてきた。これらに加え、子どもの居場所づくり推進として、2007年から「放課後子ども教室」事業が開始された。本研究では、立川市における放課後子ども教室の実態を調査し、その特色や意義を考察する。

2.研究概要

まず文献調査として、小学生の放課後生活に関わる制度の展開を整理した。その上で、立川市の放課後施策の現状と現場の実態把握のため、立川市役所子ども家庭部子ども育成課、および放課後子ども教室二小くるプレ責任者にヒアリング調査を実施した。

3.日本の放課後支援施策の展開

2007年度「放課後子どもプラン」が策定され、従来教育と福祉の縦割りで議論されてきた放課後事業を連携・一体的に実施する「総合的な放課後施策」として期待された。しかし、放課後子どもプランの実施に伴い、学童保育の実質的な廃止や「放課後の学校化」の進行が懸念されている。

4.立川市の放課後支援施策

立川市の子どもの放課後に対する施策は、待機児童の解消を目指しつつ、子どもの成長や家庭状況に合わせて選択できる居場所づくりを目指している(図1)。現在学童保育所は37ヶ所、放課後子ども教室は19ヶ所で実施されている。放課後子ども教室は、小学校の教室を使い、地域の運営委員会により実施されてきたが、2022年度からは民間への業務委託が進められ(くるプレ)、2026年までに全事業が委託される予定である。

一方、国の「放課後子どもプラン」に示された、学童保育と放課後子ども教室の一体型の実施については、立川市では余裕教室の確保等が課題となり、まだ検討段階に入った状況である。

5.放課後子ども教室の現場

調査対象とした二小くるプレは、株式会社明日葉が運営し、立川市立第二小学校の空き教室で実施されている。「大人が見守る公園」というコンセプトで、子どもが自主的に遊べる居場所が目指されている。これまで地域の人により運営されてきた放課後子ども教室は、不定期開催であったが、くるプレに移行したことで、毎日開室されるようになり、子どもにとって放課後の安定した居場所となっている。

民間委託により地域との繋がりの希薄化が懸念されたが、「地域交流デー」として以前の地域との繋がりは継続されていた。さらに、地元のスポーツチームとの体験会や地域住人による本の読み聞かせ企画など、立川市の地域資源を活用した活動が行われており、地域との緊密な関わりが目指されていた。また、小学校とくるプレ間で児童に関する情報共有が行われたり、隣接する学童保育とも交流会を開くなど、自主的な連携が進められていた。

6.まとめ

立川市の放課後子ども教室は、民間委託することにより、子どもの安定した居場所となっており、これまで以上に自由度の高い活動が行われるようになった。国が推進しながら市レベルではまだ検討段階とされる「学童保育と放課後子ども教室の一体型運営」も、二小くるプレの現場においては部分的に実践されていた。しかし、他のくるプレではトラブル時の責任の所在明確化や余裕教室確保の問題など、一体化を進める上での課題も認められる。

(図1)子どもの成長に合わせた居場所づくり
(表1)学校のある平日(冬時間)の例



2003-2024, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2024-02-20更新