tachi's COLUMN

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日野七福神巡り(2017.01.07)


 今年の元日は、日野の七福神巡りに行ってみた。いつの頃から行われているのかは分からないが、今年はちらしが目に付いた。八王子にも七福神はあるけれど、毎日日野に通勤している身であることと、我が家からだと八王子よりも日野のほうが気軽に行きやすい(同じ八王子市内だというのにね)ためである。

 日野市の七福神は、日野駅とか市役所のほうではなくて、基本的に浅川沿いに散りばめられているので、さほどのアップダウンもなく、ぶらぶらと回れるらしい。それぞれのお寺で御朱印を集め、7箇所コンプリートすると粗品が進呈されるという仕組み。モデルコースとしては、最も東寄りの真照寺(百草園駅の近く)から最も西寄りの宗印寺(平山城址公園駅の近く)に向かう、あるいはその逆コース、ということになっている。

 問題は、この7箇所の中に高幡不動が入っていること。初詣には毎年30万人訪れるという人気スポット。毎年入場規制をしていて、駅のほうまで大行列で大渋滞。7箇所巡りの途中で立ち寄る、という場所ではないよね。ということで、とにかく1日の午前中に最初に高幡不動を済ませてしまおう、という作戦で回ることに。

1.高幡不動


 モノレールに乗って高幡不動駅へ。10時くらいに着いたら、でもやっぱりかなりの人出。でもまだ参道を埋め尽くす人で身動きがとれない、というところまではいかず、ちょっと並んで比較的すんなりと境内に入る。中でも並んで一応本殿で参拝を済ましてから、池のほとりの弁天さまへ。小さいお堂の中は暗くて見えなかったけれど、弁天さまはいたのだろうか。それから人をかき分けながら事務所のほうへ回り、七福神巡りの色紙を購入。色紙代300円と御朱印代300円を支払う。色紙にはすでに7箇所のお寺と七福神が墨書きされていて、各お寺を巡って印を押してもらう、という方式。ま、一種のスタンプラリーのような感じ。

2.真照寺


 さて次にどう巡るか。最短距離で効率のいい回り方、という考え方もあるけれど、歩きながら途中で休めるところがあるかどうか、という視点も大事。とりあえず電車に一駅乗って、百草園にある真照寺へ。同じ色紙をもってる人もちらほら。百草園の駅に下り立ったのは実は始めて。こんな駅だったのか。川崎街道沿いにちょっと歩くと、七福神の赤い幟が見えてきて、すんなりと真照寺に到着。たぶん七福神巡りがなかったら、近所の人くらいしか訪れない場所だろうけど、静かでなかなか趣のあるお寺である。お寺の脇に小さなほこらがあって、そこに木彫りの恵比寿さまが祀られている。ほこらは最近できたばっかりのようだが、こじんまりとしていて何となく親近感の湧くたたずまい。

3.宗印寺


 百草園からまた京王線に乗って、今度は平山城址公園へ。このあたりの京王線の駅は、高幡不動を除くと、みんなこじんまりとして、駅前には何にもない。駅から山側へ、ちょっと狭い坂道を上っていく。時折車が上ってきたりして、どうやら車で七福神を巡っている人もいるっぽい。ほんのちょっと上っただけだけど、町を見下ろすようなロケーションに宗印寺。ここも山の麓でいい雰囲気。ここには石像の大笑いした布袋さまが、ちょっと広めの四阿に納まっている。楽しそう。お寺の裏に鳥居があって、階段を上ると小さな神社があった。お寺に参拝に来ているのか、神社に参拝に来ているのか、よく分からなくなるようなハイブリッド感。そういえば「七福神」で神様なのに、どうしてお寺に祀られているんだろう?

浅川沿い


 さてここからは徒歩で巡る。浅川沿いにぽくぽく歩いて、大仏のいる善生寺をめざす。天気もよくて暖かな日よりなので、広々した景色を見ながらのんびりと散策するのによい感じ。いつもは車で通り過ぎる平山橋を歩いて渡るのもちょっと新鮮。平山橋の上から浅川越しに富士山がよく見える。時折立ち止まってカメラを構えている人がいるので、あのあたりから富士山がよく見えるんだな、というのが分かる。橋を渡ったら川沿いの遊歩道(サイクリングコース?)を下っていく。土手沿いには住宅が並び、浅川が氾濫すると大変だろうなと思いながら歩いていくと、途中、いかにも河原っぽい広々とした広場?があって、凧揚げしている人がいる。ああちゃんと正月らしい景色があるところにはあるんだな、と軽く季節感に浸ることもできた。

4.善生寺


 河原の道から、だいたいの見当をつけて、住宅地を横切りながら善生寺をめざす。破魔矢をもったいかにも初詣っぽい人がいたのでついて行ってみると、違う神社に入り込んでしまう。お寺だから破魔矢をもっているはずはなかったか。善生寺はそのすぐ隣。ここはなかなか大きなお寺で、境内には日野の大仏が建っている。通りからは大仏の背中と横顔しか見えず、お寺側から見たことはない。門から入ると大仏の手だけの像が目に入り、なかなか強烈な印象。祠に祀られた黒々とした木彫りの大黒さまを拝んで、御朱印を押してもらう。大仏はどこから見えるんですか?と尋ねてみると、さっきの手のところから正面が見えるという。手に気をとられて全然気付かなかったけれど、戻ってみたら確かにちょうどこっちを見ていたし、さっき撮った写真を見たらちゃんと大仏も写っていた。見えていたはずなのに見ていないものだ。

5.延命寺


 河原の一本内側の県道を歩いて延命寺へ。歩道もない、さして広くない道なのに、車の交通量が多くて、歩いていてあまり楽しい道ではない。このあたりはコンビニ以外お休みできるような場所はなく、そろそろちょっと疲れてくる。延命寺には、けっこう車でくる人が多いような印象。駐車場の脇みたいなところにある小さい四阿に、石像?の寿老人。駐車場にあった自販機でお茶を買って、ベンチに座って一休み。さてあと2箇所!

6.安養寺


 県道をさらに東に歩いて行くと、自動車教習所のところに車の誘導員がいて、来る車をどんどん教習所の中へと誘っている。教習所のコースには所狭しと車が止まっている。これはいったい?と思っていると、教習所からぞろぞろと歩いて行く人、教習所に向かって戻ってくる人。高幡橋を渡るともう高幡不動があるので、参拝客の駐車場として使っているらしい。歩いて10分くらいかな、という距離なので、近くはないけどそれほど遠くもない。なるほど教習所の意外な使われ方を知った気がする。
 高幡橋を渡らずに、日野バイパス沿いに歩いて行くと、墓地が見えてきて、その向こうに安養寺。墓地と公園に挟まれているので、かなり広々とした印象のお寺。このお寺にはRC像の立派なお堂があって、その中に薬師如来像と一緒に毘沙門天が祀られている。かなり歴史を感じさせる木像の毘沙門さまで、由緒あるものなのだろう。他の親近感あふれる七福神と異なり、宝物殿みたいな感じで、たぶん一番きっちりとお祀りされていた。

7.石田寺


 そして最後は、満願寺の駅の向こう側にある石田寺。分かりやすい場所ではなく、住宅地の中をぐにゃぐにゃ進んでいくと、ふと現れる。「いしだでら」ではなく「せきでんじ」と読むらしい。お寺に入ると、どどんと大きなカヤの木。日野市の天然記念物に指定されている。石田村といえば新撰組の土方歳三の出身地であり、この石田寺には土方歳三のお墓がある。新撰組ファンがひっきりなしに訪れる場所になっているらしい。お墓自体は新しく、ふつうの形をした墓石なので、趣は今ひとつかも。石田寺にあるのは、木彫りの小さな福禄寿。カラフルでちょっと可愛い顔をして、お堂の中のガラスの向こうに納まっている。

七福神達成


 石田寺で最後の御朱印を押してもらい、これで七福神コンプリート。達成記念に粗品を進呈され、中身をみたら、入浴剤が入っていた。歩いて巡った疲れをこれで癒やしてね、ということなのだろうか。車で回るとあっという間に回れたかもしれないけど、時計を見たら2時だったので、結局4時間くらいかかったことになる。最終地点を万願寺にしたので、最後にファミレスに入って、ご飯を食べて休憩することができた。これがもし、けっこう疲れて最後にたどり着いたのが平山城址公園だと、本当に休める場所は何もなかったな、とつくづく。モノレールに乗って帰宅するともう夕方で、結局一日がかりの体験となった。

 この七福神巡りは、ほどほどの疲労感と、なかなかの達成感。なんだか今年はきちんと正月の勤めを果たしたような気にもなる。日野市全体からみるとかなり限られた範囲ではあるけど、実際に歩いてみると意外な風景に出会ったりして、いろいろと発見もあった気がする。多くの人に実際に町を歩いてもらう仕掛けとしては、七福神巡りというのも悪くないな、と思った次第である。


2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.