社会の高齢化とジェロントロジー教育<

人口学的側面

スイスの国際家政学会(IFHE)にて

スイスの国際家政学会(IFHE)にて

 我々の社会では今日、世界規模での人口のグレー化(高齢化)が進展しています。2002年、国連の第二回高齢者問題世界会議(マドリードで4月8日から12日まで開催)では、全世界で起こりつつある「人口革命」に対しグローバルに取り組むために、「全ての世代のための社会をめざして」というメインテーマで検討がなされました。その結果、世界の政策立案者に対し、高齢者と開発、高齢にいたるまでの健康と福祉の増進および望ましい状況の整備という三つの優先的課題に関する勧告がなされました。
 現在、先進国のみならず開発途上国においても、今後高齢化が急激に進み、2050年までに高齢者人口が4倍に増えると予測されています。したがって、高齢化の問題は、今日、貧困の根絶に向けた戦略や、すべての開発途上国の世界経済への全面的参加を達成するための努力との関連で考えることが重要であると認識されているに至っています。採択された文書では、高齢化が単なる社会保障と福祉の問題ではなく、全般的な開発と経済戦略の課題であるという新たな認識が示されています。さらに、会議で採択された文章の中では、高齢化に対する肯定的なアプローチを促進し、これと関連づけられる否定的で典型的な考え方を克服する必要性も強調されています1)
 さらにこの会議で各国政府は、「高齢化が国内、国際を問わず、すべての開発課題において基本的な地位を占めるようにすることの必要性を強調し、人間が歳を重ねても、達成感のある生活、健康、安全、ならびに、経済的、社会的、文化的および政治的活動への積極的参加を享受すべきであるとの認識に立ちながら、人権と基本的自由の完全な保護と促進」2)を公約しました。文書の採択により、会議ではまた、健康的なライフスタイル、サービスへのアクセス、社会サービスへの投資、および、高齢者が望む場合には仕事が続けられる権利の確保を通じ、アクティブ・エイジングを支援していく決意も表明されています。
 このような一連の社会的状況は、高齢者の問題を加齢や健康・医療、社会保障・福祉の問題といったこれまでの個別的・断片的問題としてとらえるとらえ方から、人間をトータルにとらえると同時に、その問題を全ての世代の全ての社会の問題ととらえる方向へ、さらには、我々にその問題への学問的認識と学問的体系への変革を迫るものともなっています。ここに我々が目指す広義的意味でのジェロントロジー教育の今日的、社会的意義があると考えることができます。

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