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<草稿 翻刻>
資料 フェネロンの女子教育論 下田歌子訳自筆草稿[明治二九年頃]三冊の内第1冊目
フェネロンの女子教育論
第一篇
一 女子教育の必要
女子教育ばかり、世人に忘れられたる者はあらじ。
世人は、女児をば、たゞ社会の習慣のまゝに打ち任せて、其
悪癖を除却せんとは勉めざるなり。
さハ言へ。世人は、女子にも、多少の教育は施さ (次ページへ続く)
ざる可らざることを思ふもゝ如し。然れども、世の教育てふ
ものハ、専ら、男子の教育の教育を主として只管其れに
重きを置き、そは、この我らが、社会権益の上に大関係ある
ものなりとのミ思へり。故に、男子教育ハ、女子教
育に比すれバ、大いに完全に近づきつゝあり。
即ち、男子は教育するにハ、重大なる準備
を要することを信ぜり。
幾多の賢者大人と言ハるゝ輩が、男子教育の任に当る
人の為にハ、正しき規定を作り、良き法則を
制して、専ら其便宜を計れり。、而して男子教
育の任に身を委ねたる人も許多なるべく、又、高
等なる専門学校を役立せし数も、亦決して
少なからざるべし。
※文章中の字句の訂正・挿入は、訂正したものを翻字しました。