専門学校国文科第三学年第一学期試験問題 -翻刻-

翻刻

ページ 1 2 3


  専門学校国文科第三学年           [ 昭和10年 ]

第一学期試験問題       受持 下田歌子 印

   国文  源氏物語

一、栄華の絶頂に達せる六條院の状態に就きて、

若菜上巻の後半より見ての批評を記せ、

ニ、いかなれば花にこづたふ鶯の

       桜をわきてねぐらとはせぬ

    右哥意を解釈せよ

三、@見る目は人より若くをかしげにて桜の御直衣

  のやゝなえたるに、指貫けしきばかり引き上げ給へり。

  軽々しくも見えず。もの清げなるうちとけ姿に、

  花の雪のやうにふりかゝれば、うち見上げて、しをれ

  たる枝少しおし折リてミはしの中のしなのほどに、

  居給ひぬ。Aこなたはたさまかはりて生ふし

  立て給へるむつびのけぢめばかりにこそあべか

  めれ。Bつぎ[つぎ]の殿上人は、すこのにわらうだ召し

  て、わざと無くつばいもちひ、梨子、柑子やうのもの

  ども、さま[ざま]に、箱のふたどもに取り交ぜつゝ

  あるを、若き人々そぼれとり食ふ。さるべきから物

  ばかりして、御かはらけまゐる。C猫はまだよく人にもなれ

  ぬにや、つないと長くつきたりけるを物に引きかけ

  まつはれにけるを、逃げんとひこじろふほどに、

  御簾のそばいとあらはに、引き上げられたる

  を、とみに引きなほす人も無し。Dみはし

  の間にあたれる桜のかげによりて、人々花の上も忘

  れて、心に入れたるを、おとども宮も勾欄に出でて

  御覧ず。

   右文意を解釋せよ

 

* 用箋:私立帝国婦人協会 実践女学校


翻刻

ページ 1 2 3