『源氏物語講義』


 

 <『源氏物語講義』草稿翻刻>

  『源氏物語講義』若紫 草稿 下田歌子自筆草稿(ペン)48綴)

若紫

 この巻の名の若紫は、武蔵野の紫草を取扱
つた古歌に據つた/源氏の君の歌 
 「手に摘みていつしかも見む紫の根に通ひけ
る野辺の若草」から採ったのであるが、若紫と
続けたことばは無い。
 紫草は、紫草科に属し、わが国の山野に自生する/多
年生草本で、高さ二尺餘に達す。葉は立生し、披針形、
長楕円、或は長卵形で、/その面は粗である。花 
は小形白色、茎の上部に生ず。根を乾かして、紫…
                     (下田用箋)

 

 <『源氏物語講義』 首巻> 

   實践女学校出版部 昭和九年四月刊 一七三頁

 

巻の名は、源氏の歌、

  「手に摘みていつしかも見む紫の根に通ひける野辺の若草」

によった。が若紫と続けた詞は無い。

※草稿では、巻名について詳細な解説がなされているが、推敲を重ねた結果であろ
  うか、首巻梗概には、上記の部分のみが記載されている。草稿には若紫の本文も
  含まれていることから、未刊に終わった第二巻に掲載される予定であったのかもし
  れない。
  既刊は第一巻(桐壺〜空蝉)で終わっている。