2014年度卒業式・学位授与式 式辞・祝辞
式 辞
実践女子大学・実践女子大学短期大学部 学長 田島 眞
例年に無く、寒気が居座り、寒い冬が続きましたが、ここ数日、めっきり暖かくなり、春本番を迎えようとしています。校庭の桜も、そのつぼみを膨らませ始めており、おだやかな卒業式を迎えることができました。
ここ、渋谷キャンパスでは、初めての卒業式となりました。初年度ということもあり、教職員も慣れないことが多々ありましたが、無事に新校舎での1年間を過ごすことができました。
改めて、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
ご臨席のご父母の皆様もこの日を、共にお祝いしたいと思います。
思えば、あの東日本大震災から、丸4年、被災して入学した学生も、晴れてこの日を迎えることができました。重ねて、お祝い申し上げます。
本日、人間社会学部卒業生209名、短期大学部卒業生173名に卒業証書をお渡しいたしました。
卒業証書は、皆さんの勉学の証であるとともに、実践女子大学卒業生として、品格高雅、自立自営の教育を受けた証でもあります。胸を張って社会に出て活躍することを期待しております。
さて、昨年、私、理科系の人間には、うれしいニュースがありました。それは、2014年度ノーベル物理学賞に日本人3人が受賞したことです。赤崎、天野、中村の3先生であります。その中村先生の受賞の喜びの挨拶で印象に残ったことがあります。それは、研究を成し遂げることができたのは、夢を持ち続けたからであるとおっしゃっていることです。ご存じのように中村先生は、四国の小さな会社で恵まれない環境でお仕事をしていました。こんな研究は止めろと何回も上司に言われたそうです。それでも、青色LEDをきっと実現するのだという夢を追い続け、その成功が、受賞に結び付いたのです。
このように、高い目標を掲げ、その実現に向けて行動することを、新しい言葉で、「バックキャスティング」といいます。ビジネスで、新しい商品を開発するときに使われる手法の一つです。その典型例が、みなさんお馴染みのアップル社のタブレット端末です。あのタブレットは、数年前に発売されましたが、実は、その発想は30年前に始まっていたとのことです。皆さんが生まれるよりずっと前ですね。アップル社を創業したスティーブ ジョブ氏が、30年前に現在のパソコンの原型のアップルⅡを世に出した時に、将来のパソコンは、こんなものではない、手のひらサイズで、世界中の情報がたちどころに手に入るものになるのだと、夢見たのです。もちろん、インターネットが誕生したのは、最初のパソコン、アップルⅡが誕生してから15年後のことです。
その何も技術的裏付けが無いままに、ただ、こんなものがあったら良いなと夢を持ち、その夢を実現するには、どういった技術を開発していかなければいけないかと、研究を進めたのです。そして、30年後に夢は実現いたしました。
最初に夢を持つこと、技術の開発はそれを追いかけること、これが、「バックキャスティング」という手法です。
卒業生の皆さんもぜひ、この手法を人生に取り入れていただきたいのです。まず、30年後の夢をみてください。その夢を実現するには、今、何をすべきかを考えましょう。日々、努力をすることも必要ですが、まず、30年後の夢を見ることから始めましょう。
皆さんは、日野と渋谷という2つのキャンパスを経験したことになりますが、キャンパスは変わっても、実践の教育・研究には何ら変わりはありません。2校地化を契機に一層の発展を遂げると確信しております。卒業後に、実践を再び訪れ、その変革を目にしていただければ幸いです。いつでも皆さんを歓迎いたします。
改めて、ご卒業おめでとうございます。
お忙しい中、ご出席をいただきました、多数のご来賓と共に、お慶び申し上げ、式辞といたします。
※2015年3月21日 実践女子大学人間社会学部・実践女子大学短期大学部 卒業式式辞より
祝辞
学校法人実践女子学園 理事長 井原 徹
短期大学部及び人間社会学部卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
ご父母の皆様、これまでの長い年月のご苦労に対しまして、心からの敬意と祝意を表します。おそらく、皆様はわが子の卒業にほっとしておられると共に、厳しい社会への船出を目前に、期待と不安を、感じていることと思います。
しかし、お嬢様は、この大学で身に付けた様々なことを糧として、大きく花開いてくれると、信じていただきたいと思います。
卒業式にあたり、常日頃考えているところを述べて、祝辞とします。テーマは「変える勇気と変えない勇気」そして「青春」です。
卒業して社会に出てからの長い人生においては、重要な決断のときが多々訪れます。そのときには次の言葉を思い出してください。ラインホールド・ニーバーという人の言葉です。
「神よ、私に変えるべきものを変える勇気と、変えられぬものを受け入れる寛容さと、変えられるものか変えられぬものかを見分ける知恵を与えたまえ。」
変えなければならない、変えたいと思ったら、思い切って変えましょう。変えてはならないと思ったら、勇気をもって踏みとどまりましょう。そしてその時の状況を注意深く受け入れて、様子をみましょう。
そうした判断が的確にできるようになるために、卒業したあとも本を読み、他人の話を聞くことによって、変えるべきか変えざるべきかの判断がきちんとできる、知恵を豊かにしましょう。
そして何よりも大切なことは、そうした知恵に基づく自分の考えを、信念に変えて行くことです。「信念」を持つことは、生きていく上でとても大切なことです。しかし信念とは、無知や頑なな心や独りよがりから生まれるものでないことも自覚しておきましょう。
サムエル・ウルマンの「青春」という詩の一節を加えます。
青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う。
歳を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき、はじめて老いる。
人は信念と共に若く、疑惑と共に老いる。
人は自信と共に若く、恐怖と共に老いる。
希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。
過去の失敗は反省の糧となり、成功に導かれます。しかし悔やむこと、つまり悔恨からは失望と後退しか生まれません。自暴自棄ややけっぱちからも、何も生まれません。身を滅ぼすだけです。
理想や信念を持ち、自信を持ち、希望を持って、そして自分を変えることへの勇気をもって、粘り強く、したたかに生きて行ってください。
さて、皆さんは、「品格高雅・自立自営」を理念として、116年の伝統を築いてきたこの実践女子大学の、短期大学部、人間社会学部で学びました。この理念をどの程度理解し、そして、身につけていただけたでしょうか。この理念を強く意識して学生生活を送ってきたか否かに拘わらず、皆さんの心には、知らず知らずに染み入っている筈です。
少なくとも世間はそう思って評価してくれています。そのことを自覚した上で、社会に出てください。実践女子大学を卒業するということは、そのような大切な価値があったということです。
今の社会は、とても不安定な状況にあります。価値観のすさまじい多様化によって、生きることの指針を明確に見出すことが、とても難しくなっています。このような厳しいときに、皆さんは社会人として歩みを進めなければなりません。「信念」を持って、前向きに人生を送って行ってください。
最後になりましたが、ご父母の皆様には、これまで、後援会活動を中心として、実践女子大学のために、様々なご支援とご協力を賜ってまいりました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。お嬢様のこれからの歩みが、豊かで実りあるものとなるよう、心からお祈り申し上げます。
それではすべての卒業生の皆さん、自分を信じて、明日に向けての新たな一歩を、大きく踏み出してください。そして、この大学をいつまでも忘れないでください。
何よりも皆さんの卒業を心からお祝いして、祝辞とします。
※2015年3月21日 実践女子大学人間社会学部・実践女子大学短期大学部 卒業式祝辞より