「東アジアの千年紀(ミレニアム)絵画 −複製による−」

范寛  谿山行旅図   北宋(11世紀前半)
絹本墨画着色 206.3×103.3cm 台北国立故宮博物院
(複製)

宋代以降、中国絵画は水墨山水画を中心に展開する。戦乱によって唐の文化が地上から一掃された華北において、西暦900年から1000年頃にかけて、次の時代をになう水墨山水画が急激に発展していった。この作品は、華北の在野の画家たちの成果を示す、最も早い時期の確実な遺品である。在野の画家であった范寛は、出身地陝西地方の、乾いた岩肌の巨大な峰を大画面いっぱいに真っ正面から描きあげている。のち郭煕によってまとめられた山水画の3つの構図法(平遠、高遠、深遠)のうち、高遠(下から高山を仰ぎ見る)構図の典型的な作品である。乾いた禿び筆で岩肌が丹念に描きあげられ、数株の木々は紅く色づき、岩や幹の輪郭がくっきりとくくられ、秋の澄んで乾いた空気が感じられる。小高い丘には楼閣がそびえ、その大きさと比べたとき、後ろにまっすぐに落ちる滝の高さは目もくらむほどである。滝壺の深い谷には霧がかかり、せり出すようにそびえる峰との間には厚みのある大気が暗示されている。執拗に描き出された細部と、巨大な峰はどこまでもリアルな存在感と重量をもっている。画面右下から登場したロバの隊商が、この雄大な景色には目もくれず歩みを進めている。古来范寛画として名高い作品であったが、ロバを追う人物の右側木の葉の間に小さく「范寛」の落款が、900年以上経った近年になって「発見」された。
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