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授業という名の“戦場”

私の講義科目は「ジェンダー論」「女性と労働」「家族社会学」「マスコミュニケーション論」、それに「ワーク・ライフ・バランス論」です。これらの科目間には相互の脈絡がなさそうに見えるかもしれませんね。いや、あるのです。

「マスコミュニケーション論」はひとまず脇に置くとして、残り 4 科目に共通しているのは、女性として、あるいは男性としてどう生きるかを再考するにあたっての、基礎的な知識を習得する学問です。例えば「ジェンダー論」は、簡単にいうと、ジェンダーという眼鏡をかけて世の中を見渡してみると、特に女性にとって矛盾することがいかに多いかということが見えてきます。

就職もそうですね。男子学生には企業から内定通知がどっさり届くのに、女子学生にはさっぱり音沙汰がない。なぜなのか。その原因を探っていくと、社会における女性の位置づけが、どうやら男性とは異なっているということが見えてきます。それを理論的に解明するのが「ジェンダー論」です。私は男女共同参画関連の政府委員をしていますので、社会政策として行政の中に、改善に向けた取り組みがどう組み込まれているかについても、詳しく見ていきます。

今の話を労働という視点で解明するのが「女性と労働」ですし、親子・夫婦をキーワードに分析を進めるのが「家族社会学」です。授業を通じ、女性としてライフステージの中に仕事をどう位置づけるのか、結婚後はどうしたいのかといった問題を、大局的に考察できるようになってほしいというのが私の願いです。

さて「マスコミュニケーション論」ですが、いつも最初の授業で話をするのは「ウオッチ・ドッグ」論です。ジャーナリストの使命は権力を監視する犬であって、決して権力の番犬になってはいけないということ。私は新聞記者を長くしていましたので、体験をまじえながらジャーナリズム論を語りますが、大事なことは既成概念や事実に対し、常に「これでいいのかな?」という疑問を持つこと。実はこの点は、ジェンダー論にも通じるのですね。先ほど、例えば「なぜ就職差別があるの?」からこの学問は出発すると申し上げました。結局、学問は素朴な疑問が出発点になっているということです。では皆さん、授業という名の“戦場”でお会いしましょう。

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学生へのメッセージ

アルバイト以外に、何か一つ打ち込んだというものを学生時代に作ってほしい。例えば夏目漱石全集を全巻読むとか、仏教伝来について徹底して調べるとか。専門に関係のない余技(教養と置き換えてもいい)が、人間の幅を広げるのです。漱石の書簡には、生きるか死ぬか、命のやり取りをするような激しい精神で文学をやる、という一節がありますが、そのような魂に激しく呼応できるのは、あなたたちのように若く、純粋な時代だけなのです。

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お勧めの一冊

一冊は難しいですね。岩波書店の PR 誌『図書』が 2007 年の臨時増刊号で、岩波文庫創刊 80 年記念として「私の 3 冊」を特集しました。私がその中で挙げたのはゲーテの『ファウスト』、イプセン『人形の家』、樋口一葉『にごりえ・たけくらべ』。どの作品も女性の強さ、時代に翻弄される悲しさなどを描ききっています。

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【教員プロフィール】
鹿嶋 敬(KASHIMA Takashi)
人間社会学部教授
主な業績:【単著】男と女 変わる力学(岩波新書、1989);男の座標軸(岩波新書、1993);男女摩擦(岩波書店、2000);男女共同参画の時代(岩波新書、2003);雇用破壊 非正社員という生き方(岩波書店、2005);恵里子へ 結納式の 10 日後、ボリビアで爆死した最愛の娘への鎮魂歌(日本経済新聞出版社、2009)。
【共著】岩波講座 自治体の構想(岩波書店、2002);ジェンダー白書「女性に対する暴力」(明石書店、2003);ジェンダー白書「女性と経済」(明石書店、2007)。
最近のテーマ:ワーク・ライフ・バランス社会の形成 企業のダイバーシティの取り組み、ジェンダー関連政策の展開
最近の社会貢献:男女共同参画会議議員(2005〜)、内閣府監視専門調査会会長(2005〜)、次世代のための民間運動〜ワーク・ライフ・バランス推進会議代表幹事(日本生産性本部、2006〜)、国立女性教育会館監事(2007〜)、財団法人女性労働協会会長(2011〜)、ワーキングウーマン・パワーアップ会議代表幹事(日本生産性本部、2008〜)。
メール:
(Last update:2011/04/08)

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