槙 究 色彩研究紹介

 

「配色調和の型」は柄で変化する?

類似の調和は看板には適用できない...!?

FH000006.JPGFH010002.JPG


トーン・オン・トーン配色は色相が類似したもの。トーン・イン・トーン配色はトーンが類似して色相が異なる色を組み合わせたもの。こういう配色が調和すると言われてきた。特に、色相を類似させるものが好まれるようだ。類似の調和が基本なのだ。
で、類似させると、看板は成立しないような気がする。類似した配色だと、看板の文字は読みづらかろう。では、調和して読みやすい看板はできないものなのだろうか。

Image1.gif横軸が落ち着き・まとまり、縦軸が明るさ・面白みの軸 オフィス街、商業地域、住宅街の区別に拠らず、右上になるほど好まれる・美しいと感じられる

クリックすると拡大します

 どういうことかというと、オフィス街はだいたい整然としていて落ち着きが感じられる。しかし、活気や面白味には欠ける。商店街は雑然としているかもしれないが、活気や面白味はある。両者に欠けているものを補えれば、もっと好まれる街並みになるだろうということを、評定実験の結果は示唆していた。「好ましさ」の評定と「美しさ」の評定は似通っていたから、この2つの要素を満たせれば、美しい街並みも手に入る。したがって、皆さんにまず訴えたいのは、「落ち着き」と「面白味」をどうやって増すかを考えようということである。

 オフィス街のようなところでは、面白味を増す方策を考えた方が良いのだから、規制するという方向性では効果は望めない。では、どうしたらいいか。
 実は、商店街の手法を持ち込めそうなのである。物があふれ出していたり、ウィンドウから店内が覗けたり、カラフルな色調であったり。そういうものを持ち込めばいいのである。もちろん、せっかくの落ち着きを台無しにしては元も子もないから、ちょっとは工夫がいるだろう。しかし、それほど難しいことはない。1階は中の様子が覗けるようにするとか、自社製品を展示するとか、喫茶店にするとか。壁はグレーの大理石より、ホワイトだの、ベージュだの、そういった色を用いてみる。街路樹を植えたり、カラフルで楽しげな彫刻やベンチを設置してみるのもいいだろう。そういうことで、好まれる、美しい街並みができると思われる。

FH010020.JPGFH030008.JPG

 商店街の方はどうしようか。こちらは、ある程度規制が必要となることが多いだろう。看板の位置や面積を制限するとか、のぼりの類は禁止するとか、「○○商店街」と書いてある街路灯はもうちょっとシンプルなものにするとか。オフィス街の真似をしてみよう。

 住宅街は...。これは考えてみてください。考え方は同じです。散歩していて楽しくなる街並みができてくると思います。

※紹介した研究の詳細は....槙 究、渡部裕子、飯島祥二:単色の印象評価 −背景色と個人差に着目して−、日本色彩学会誌、Vol.31、No.1、pp.2-13、2007 参照LinkIconPDF