槙 究 色彩研究紹介

 

Privateな色とPublicな色

「あなたは何色が好き?」

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 昔、面白い話を読んだことがある。「What color do you like?」と訊ねられたとき、アメリカ人は「Blue!」と素直に答えるが、イギリス人は「For what?」と答えるというのである。確かに、どんな青好きでも、身の回りすべての物品が青という人はいないだろう。自転車は青だけれど、ソファなら白や茶や黒がお好みかもしれない。

03product-image-list.pngさまざまな物品×さまざまな色

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 それでは、物によって好みの色はどう変化するのだろうか。そこにはどんな個人差が見られるのだろうか。それを明らかにするために、さまざまな物品に色が付いた状態をイメージして評価してもらう実験と、さまざまな色を付けたカラーシミュレーション画像を評価してもらう実験を実施した。

03-obj-col-coef-exp02.pdf個人差に基づいた2つのグループの違いが「←」で表されている03obj-col-score-exp2.pdfPublicな物品に合う色は右側、Privateな物品に合う色は上側に位置している


 それで結果はということなのだが、皆で共有する物に相応しい色と個人の持ち物に相応しい色は異なるという結果が出た。前者は白、ベージュといった色が好まれる、左図右側の物品群である。一方、後者は個人差があり、それによって若干色が異なるけれども、赤や黒を好む人達もいれば、水色やピンクを好む人達もいるという物品群で左図情報に位置する。個人差は、左図における時計回りの位置のずれとして表現された。このような色の好みが類似する物品群は、評定刺激の呈示方法によって変化しなかった。
 一方、好まれる色は色をイメージさせたときとカラーシミュレーション画像を呈示した時では、異なった。イメージさせるという呈示方法では、物品の色の好みを正確に知ることはできないのかもしれない。

※紹介した研究の詳細は....槙 究・赤松摩耶、物品の色の好み −呈示刺激による評価の差異の検討を中心に−、日本色彩学会誌、Vol.33、No.3 、pp.239-250、2009 参照LinkIconPDF