槙 究 色彩研究紹介

 

色の規制だけやっても景観は良くならない

色はフィルターだ!

IMGP0942.JPG 横浜は景観行政に力を入れている。田村さんという中心的な役割を担ってきた方の話を聞いたことがある。彼は、色の規制をするにも、具体的な数値は出さず、「茶系統」とか、「白系統」ぐらいの合意から始めるのだと言っていた。具体的な数値は抵抗が大きい。それより、やんわりとした努力目標をまず作り、ある程度環境が整ってきたところで、具体化していこうというのである。
 実務家の知恵を感じる話題であった。

 色の研究もだいぶやってきたが、色は形態の効果を引き出すかどうかに関わっているという結果が得られた実験の話をしたい。
 これは、街並みスライドの壁面をカラーシミュレーションした画像を作成し、評価してもらうというものであった。落ち着き・まとまりの評価と生活感の評価に及ぼす色彩の効果に、見るべきものがあった。
 のっぺりした壁面で構成されるオフィス街の画像では、類似した色で構成される配色とすると落ち着きやまとまりが感じられるが、バラバラの派手な色を入れれば、それらが感じられない。一方、ごちゃごちゃした街並みの場合、色を揃えようが、揃えまいが、まとまりや落ち着きは低評価のままだった。

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 一方、住宅街の中の豆腐屋や下町の住宅の画像は、すっきりとした配色にすると生活が感じられるという側に評価されるのだが、バラバラの派手な色を使えば生活が感じられない、となる。オフィス街の方は、もともと生活感がないからだろうが、すっきりとした配色でも、バラバラの派手な色でも、生活感は出なかった。

 こういう評定結果が出るところを見ると、色は形態が持っている(「白黒の画像が持っている」と翻訳してもよい)印象に及ぼす効果を引き出すかどうかを決める役割を果たしていそうだ。ということは、もともとの街並みが、形態としてまとまりなければ、色をどんなに統一してもまとまりは感じられないということになる。

※紹介した研究の詳細は....槙 究、乾 正雄、中村芳樹:街路景観の評価構造の安定性、日本建築学会計画系論文集、No.458、pp.27-33、1994.4 & 槙 究、竹之内香織:色彩規制が街路景観の色彩構成に及ぼす影響 −被験者主導のカラーシミュレーション その2−、日本建築学会大会学術講演梗概集D-1、pp.435-436、2004参照