槙 究 景観研究紹介

 

街並みには、「落ち着き」と「面白み」が求められている

「オフィス街は落ち着きが重要だが、商店街は活気や面白味が重要だ。」

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 こう言われれば、うなずく人が多いだろう。大学院のとき、研究室で話をしたときも、皆そう考えていた。だから、「オフィス街でも商店街でも、落ち着き・面白味の必要性は同程度である。」という評定実験結果が出たときは悩んだ。1ヶ月は悩んだ。しかし、どうも結果は正しいらしい。我々の感覚の方が間違っているようだ。

Image1.gif横軸が落ち着き・まとまり、縦軸が明るさ・面白みの軸 オフィス街、商業地域、住宅街の区別に拠らず、右上になるほど好まれる・美しいと感じられる

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 どういうことかというと、オフィス街はだいたい整然としていて落ち着きが感じられる。しかし、活気や面白味には欠ける。商店街は雑然としているかもしれないが、活気や面白味はある。両者に欠けているものを補えれば、もっと好まれる街並みになるだろうということを、評定実験の結果は示唆していた。「好ましさ」の評定と「美しさ」の評定は似通っていたから、この2つの要素を満たせれば、美しい街並みも手に入る。したがって、皆さんにまず訴えたいのは、「落ち着き」と「面白味」をどうやって増すかを考えようということである。

 オフィス街のようなところでは、面白味を増す方策を考えた方が良いのだから、規制するという方向性では効果は望めない。では、どうしたらいいか。
 実は、商店街の手法を持ち込めそうなのである。物があふれ出していたり、ウィンドウから店内が覗けたり、カラフルな色調であったり。そういうものを持ち込めばいいのである。もちろん、せっかくの落ち着きを台無しにしては元も子もないから、ちょっとは工夫がいるだろう。しかし、それほど難しいことはない。1階は中の様子が覗けるようにするとか、自社製品を展示するとか、喫茶店にするとか。壁はグレーの大理石より、ホワイトだの、ベージュだの、そういった色を用いてみる。街路樹を植えたり、カラフルで楽しげな彫刻やベンチを設置してみるのもいいだろう。そういうことで、好まれる、美しい街並みができると思われる。

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 商店街の方はどうしようか。こちらは、ある程度規制が必要となることが多いだろう。看板の位置や面積を制限するとか、のぼりの類は禁止するとか、「○○商店街」と書いてある街路灯はもうちょっとシンプルなものにするとか。オフィス街の真似をしてみよう。

 住宅街は...。これは考えてみてください。考え方は同じです。散歩していて楽しくなる街並みができてくると思います。

※紹介した研究の詳細は....槙 究、乾 正雄、中村芳樹:街路景観の評価構造の安定性、日本建築学会計画系論文集、No.458、pp.27-33、1994.4 参照