槙 究 景観研究紹介

 

高さ規制は効力がない?

高さ制限というものが存在しますが...


 以前、私と同い年の建築家の方と話をしていたら、角地の高さ制限の緩和規定がやっかいだという話が出た。フランスで学んだ経験の持ち主である彼は、周辺と高さを合わせた建物を提案するのだが、依頼主にちょっとでも知識があると、高さ制限いっぱいの建物を設計するように言われてしまうというのである。私も、こういう変な条項は改正するべきだと思う。
 しかし、高さを揃えることが街並みのまとまり感に寄与する割合が少ないケースも多々あると見る。

 前項で紹介した新宿通りのCG画像では、高さを揃えてもほとんど印象は変化しなかった。視点も限定されているし、ウォークスルーしたといっても、歩くより相当速いスピードであったわけだから、研究結果だけで結論づけるのは早計であるのは承知している。しかし、狭い路地を思い起こしていただければ、高さの変化のわかりづらさを理解していただけるであろう。D/H(道幅/建物高さ)が大きくないと、スカイラインの統一感を感じ取ることができないのである。スカイラインの統一のよき事例として挙げられる丸の内は、皇居側から眺めたときがそれを一番感じることができるし、御堂筋のD/Hは1程度はあろう。
 ちなみに、角地は「退き」が取りやすいので、揃えた方がいいケースが圧倒的に多いと思う。

_NowPrinting.jpg 高さ制限をするのであれば、もう一つやって欲しいことがある。セットバックである。こちらはシミュレーションしたことはないが、確実に効果があると感じる。というのも、青山によい事例があるのだ。
 骨董通りは、表参道の交差点からほど近い通りだが、明治通り側からアクセスすると、右側のビルがセットバックしている。これが大変によい。私が田舎者だからかもしれないが、空が感じられるので、自然とスカイラインに目をやってしまう。1階部分が揃っているのも、よい。

 そうそう、軒面を揃えるのも、かのシミュレーションでは効果が薄いと出た。しかし、1階部分のデザインを揃えて、2階以上の部分の軒面を統一的なデザインにすれば、話は別だろう。下に示すのはロンドンの事例であるが、相当に効果がありそうだ。
London1-15.jpg

※紹介した研究の詳細は....槙 究、竹之内香織:日欧比較に基づく街路景観改善手法の提案 −3Dモデラーを用いた新宿通りのシミュレーション−、日本建築学会大会学術講演梗概集D-1、pp.317-318、2002参照