槙 究 色彩研究紹介

 

読みやすく好まれる看板はできる?

類似の調和は看板には適用できない...!?

 トーン・オン・トーン配色は色相が類似したもの。トーン・イン・トーン配色はトーンが類似して色相が異なる色を組み合わせたもの。こういう配色が調和すると言われてきた。特に、色相を類似させるものが好まれるようだ。類似の調和が基本なのだ。
そこで色を類似させる。すると、看板は成立しないような気がする。類似した配色だと、看板の文字は読みづらかろう。では、調和して読みやすい看板はできないものなのだろうか。
 そういった事柄のベースとなる知識を得ようと、数多くの2色配色を作成し、読みやすさと好ましさを判定してもらう実験を行った。

06letter-background-sample.png06-letter-background-sample2.png

文字と背景 & 図形と背景。どちらもやってみました。

06readability-result.pdf

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 文字と背景の組み合わせでは、図の左上から右下が読みにくく、右上と左下が読みやすい。つまり、明度差があるほど読みやすいという結果だ。色相や彩度の影響は小さい。
 実は、2色配色では、好ましさの評定でも明度差との関係が大きいという結果が出た。色相の影響は読みやすさよりも若干大きかったが、基本的には明度差を付けることが、読みやすさにも好ましさにも効くということである。それなら、看板は明度差のある配色にすればいい。

06letter-background-result.png横軸が落ち着き・まとまり、縦軸が明るさ・面白みの軸 オフィス街、商業地域、住宅街の区別に拠らず、右上になるほど好まれる・美しいと感じられる

 図形だとどうだろう。
 図の左列が文字の方が図形より評価が高かったもの、左列が図形の方が評価が高かったものである。色相が異なる場合には文字の方が、色相が類似して明るさも大きくは違わない場合には図形の方が評価が高いことが大きいことが読み取れる。

※紹介した研究の詳細は....槙 究、田中奈苗、留目真由香:読みやすさと配色の良さの両立 −文字色と背景色の組み合わせの評価−、日本色彩学会誌、Vol.29、No.1、pp.2-13、2005 参照LinkIconPDF