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生活環境を知るための文献

私が薦める一冊の本

芦原義信
街並みの美学、続・街並みの美学
岩波現代文庫、2001

旅をしていると、建築を見る楽しみがあって良かったなと思う。

バルセロナのガウディ、シドニーのオペラハウス、パリのエッフェル塔。建物が街を代表する都市がある。それも魅力であるが、そこで語られる建築は、都市を構成する数多くの建築のひとつに過ぎない。街並みというのは、そういったアノニマスな(無名の)建物達が形作っているものだ。
その無名の建物達が観光客を呼び寄せることがある。私はイタリア中部の都市シエナが好きだが、「街並み」の魅力は、建物という造形の魅力より、もうちょっと日常的な場面に近いものだ。

芦原義信は、世界の街を歩き、観察し、『街並みの美学』を書いた。観察という手法は、デザインと関連づけるのにちょうどよいレベルだ。細かすぎず、大きすぎず、人の視点をそのまま持ち込むことができる。そういうヒューマンな視点で観察し、考えたことをまとめている。
ポジティブ-スペース、ネガティブ-スペースなどゲシュタルト心理学と結びつけた考え方や、D/Hという建物高さと街路幅の比の考え方などは、建築計画研究にもずいぶん影響をおよぼしたと思う。

チステルニーノ、ヴィジェーヴァノ、パディントンなどは、この本を読んで訪れた。サンジミニャーノは再訪した。イスファハン、ニューヨーク、チャンディガールは、訪れてみたいが叶っていない。

この紹介を期にもう一度読み直して、思いを新たにしたところである。(K. M.)