生活環境講座

第32回 高分子材料にふれること 加藤木秀章
生活環境で高分子材料が大活躍

 10,000以上の分子量を持つ化合物のことを高分子材料と言います。プラスチック(合成樹脂)や合成繊維がその代表で、生活環境の「衣」、「モノ」、「住」分野には多くの高分子材料が使われています。ふと、何気ない製品に触れ、「あっ!ここにも高分子材料が使われている!」と気付くことがあります。

繊維強化プラスチックを利用した義肢

繊維強化プラスチックの製品が使われている庭(庭石やつくばい等)

 高分子材料には、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂があります。熱硬化性樹脂は、熱を加えると硬化し、冷やしても硬化したままになるものです。また、熱可塑性樹脂は熱を加えるとやわらかくなり、冷やすと固まります。それらの高分子材料は、以下のようなさまざまな製品で用いられています。

熱硬化性樹脂の主な利用

ネイル、釣竿、テニスラケット、スポーツシューズ、ゴルフシャフト、自転車のフレーム、自動車の構造材料、バスタブ、ウォータースライダー、小学校体育館の屋根、義肢 など

熱可塑性樹脂の主な利用

シャツ、スカーフ、スカートなどの多くの繊維製品をはじめ、バック、ペットボトル、シャーペン、収納ケース、椅子、テーブル、携帯電話、パソコン、テレビ、義肢、自動車の内装材、交流館の吊り屋根 など

高分子材料について学ぶことの重要性

 我々はただ使うだけでなく、生活環境の製品に利用されている高分子材料の種類や特性に関する知識について、よく知らなければいけません。

 材料科学研究室のゼミ活動では、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の種類・特性について学ぶため、作りやすい形状であるプレートに着目し、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などを利用したプレート成形に関する体験型学習を行っています。

 高分子材料である繊維(化学繊維や天然繊維など)と熱硬化性樹脂を利用してプレートを成形するためには、まず金型を設計・作製します。その後、構成材料や恒温乾燥機、金型、フィルム、離型剤などを利用し、プレートを成形します。成形後、プレートを取り出し、凹凸がなく平らな表面であるか、ボイド(空洞)が存在しないかなどを観察します。表面にボイドが生じた際には、綺麗なプレート表面になりません。また、成形時に必要な高分子材料の融点やガラス転移、流動性などに関する知見も知っていないと、意図しない成形中のプレート内部の繊維ずれやプレート表面のうねりなどの不良なども生じてしまいます。

 そのプレートの成形での体験型学習では、実際に触れながら、重要かつ実践的な高分子材料の知識・経験を得ています。

新しい可能性を求める面白さ

 生活環境学科には、生活環境「衣」「モノ」「住」分野に利用される新製品を創造するために、必要な科目が多くあります。生活環境で繊維・テキスタイルが多く利用される時代となり、さまざまな講義で得た知識・経験をもとに、まだ見たことがない新しい製品の可能性について探求・創造すると、非常に面白いと思います。「少し先の暮らし」として、高分子材料を用いている液晶ディスプレイが棚の扉や引戸に組み込まれた提案もされています。(H. K.)