2014年11月
公開市民講座「女子教育の過去と未来をつなぐ」
10月24日、渋谷キャンパスにて公開市民講座が開催され、英文学科の3名の教員が、それぞれの専門分野の視点から「女子教育の過去と未来」について講演いたしました。学内外より200名ほどの方々に参加いただき、盛況に終了しました。
最初に志渡岡理恵講師は、イギリスにおける教育制度の歴史(19世紀前半までのガヴァネスや家族による教育から、パブリック・スクール、高等教育機関(大学)など19世紀中ごろ以降にみられた教育機関の発展)を振り返るとともに、当時の女性が学校でどのようなことを学び、どのような学校生活を送っていたのかを、女学校・女子大学を描いた小説から読み解きました。当時のイギリスでの女子教育の目的を紹介しつつ、現代の(日本も含めた)大学における教育目的に目を向け、今後、大学が女子学生を教育する際に重要視すべき点を4つほど提示しました。
次の佐々木真理講師のお話では、舞台をアメリカに移し、同じく19世紀にみられた女子教育の歴史について(特に、Dame School、 Seminaryを経て、Collegeへと発展していった教育機関の変遷と、それぞれの教育機関が掲げた教育目的の変化や、多様化について)、詳しく紹介されました。高等教育機関への発展によって、女性が家庭以外でも活躍できるような場ができるとともに、リーダーシップ性が育まれ、ロールモデルが提示されたことで、その後の女性運動、社会改革を後押ししたことにも言及されました。
最後に村上まどか講師は、「ことばを変えれば社会も変わる」という視点から言語と女性について考察しました。性差別的な“He-man English” (男性形のheやmanで、女性も含めて指し示すこと)がどのように直されてきたかを振り返るとともに(興味深いことに、今年の6月から、性差のない代名詞xeという単語がカナダの小学校で実験的に導入されているそうです)、日本語における性差別的な語彙・表現への取り組みにも言及しました。性差別的なことばに気づかせ、それを別な表現に置き換える提言をしていくことが教育において重要であると主張され、講演が締めくくられました。
講演後の質疑応答では、「現代を生きていて、女性として疑問や憤りを感じることはないか」といった質問から、女性の生き難さなどにも話が及びました。ご来場いただいた方からのアンケートでは、「欧米においても女子教育発展の初期には日本と共通するような問題があることに気づかされた」、「イギリスとアメリカの女子教育の比較を一度にすることができて有意義だった」、「性差別をあらわす語について具体的な例が示されていてわかりやすかった」等、様々なご意見をいただきました。ご来場いただいた皆様、貴重なご意見をくださった皆様、当日は誠にありがとうございました。この場を借りて感謝の意を申し上げます。
吉本真由美 記